「あぁ、マリア(母よ)。あなたの愛を注ぐべきは、僕ではなかったのに」

 そう、少年は呟いた。
 そして椅子で寝ている妹の方を見遣る。
「マリアの愛はいらないと、お前は言うのか?」
「泥棒さんには必要なの?」
 先程否定したにも関わらず、少年が再び自分を泥棒と呼んだことに男は苦笑した。
「いらない、のではなく、そうだな。必要ない、の方が正しいな」
「……そう。じゃあ、僕はどうなんだろう」

 あぁ、マリア(母よ)
 私に注ぐべきは愛ではなくもっと他の……

 もっと他の?

「あなたの愛でさえ、汚いものに見えていたのだろうか、僕には」
「うん? 何だ」


 ――汚いモノに。




適するモノ


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