「じゃあぼくも同じのを一つ」
折紙さんが頼んだのは、サーモンとマッシュポテトのサンドイッチだった。本音を言えばサンドイッチ一つなんて朝飯前だけど、折紙さんがお会計してくれるって言うから下手に同じの三つ、なんて頼めなくて、要するにとても居心地が悪い。おごってもらうっていうのにぼくはすごく図々しいことを考えているし、折紙さんはさっきからちらちらぼくの方を見ているし、それに腹ぺこだ。
「あの、キッドさん」
「…えっ!?何!」
「実は僕、あんまりお腹減ってないんだ。さっきトレーニング後にちょっとつまんじゃって。だからもしよければ僕の頼んだ分も食べてくれないかな」
折紙さんはいつもの柔らかい口調で言って、ぽんっとそのぺちゃんこに違いないお腹辺りを叩いてみせた。きっと食い意地の張った女の子だと思われてる!その時は本当に恥ずかしくて、顔が真っ赤になるのがわかった。だけどぼくが何か言う前に店員さんがサンドイッチを二つ乗っけたトレイを運んで来て、ぼくは一瞬前のことをすっかり忘れて思わず手を叩いちゃった。
「すっごい!大きーい!おいしそう!これ本当に二つもいいの!?二つも!」
「うん、どうぞ。よく噛んで食べてね、さすがに三十回は噛みすぎだけど」
「何で知ってるの!?」
「カリーナさんに聞いて、笑っちゃった」
「ひっ…ひどいよ折紙さん!」
それからぺろりとサンドイッチを完食して、ぼくと折紙さんは食後のウーロン茶でずっとおしゃべりしてた。ヒーロー業のこととか、仲間のことはもちろん、お互いのことも。折紙さんは目をきらきらさせて日本のことを教えてくれたし、ぼくも両親の話をして、折紙さんが何度も頷いてくれるからすごく嬉しかった。結局話が尽きることはなくて、だから次もまたここに来てサンドイッチを食べる約束をしている。サーモンとマッシュポテトのやつを二つ、ね。