いま一つ踏み出せない距離で、私は朽木さんの友達でいる。同じ世界を見て、きっと同じ人を好きになって、だけど朽木さんのためなら命を投げ出していいとさえ思えるのに、私は彼女に冗談も言えない。腫れ物を扱うみたいに接するのは彼女も一緒だった。彼女は、黒崎くんにしたみたいに私を叱り付けたりしない。黒崎くんとしたみたいに私の手を取ることもない。
「朽木さん、今頃どうしてるかな」
「…さあな」
二年も前ならば、黒崎くんの隣を歩いていたのは朽木さんだったはずだ。私は二人に会ってしまわないように、用事があるふりをして走って帰るか、わざと教室でもたついて夕暮れを一人で歩いたものだ。今、私は黒崎くんの隣を歩いている。想像以上にここが苦しいのは、私だからかなあ、朽木さん。