「ハル、どうしちゃったんだよ、これ。まだ八時だし、それにそんな格好でめそめそ泣いたりして。とりあえずビアンキが来る前に片付けなきゃ」
「ど、どうかしちゃったのは…ツナさんの方です!」
彼女はしゃくり上げるように叫ぶと、脱兎の如く俺の横を走り抜けてキッチンから出て行った。三袋分のウインナーの袋と、その中身が全部詰め込まれているとは到底思えない、あの薄っぺらいのお腹のことを考える俺とが、否応なしに取り残される。そこへ軽快な衣擦れの音と共にビアンキがひょっこり顔を出して、俺は年甲斐にもなく泣き付きたくなった。
「今日は早いのね、ツナ」
「あぁビアンキ、それが…あの、ハルが」
「ハルが何よ」
言い淀む俺にビアンキが笑う。手には茶色い紙袋を抱えていて、汗をかいた檸檬やアボカドや、名前も知らない果物が次々とキッチンに広げられる。
「俺…何かしたのかな」
「何もしなかったんじゃない?」
クーラーの微風にすら靡く長い髪が、俺の少年染みた心を強く揺さぶる。紙袋から最後に出てきたそれは、まぎれもなく魚肉ソーセージだった。ビアンキが片眉を上げて俺の視線を捕らえる頃、着替えを終えたのか彼女のいきり立ったような足音が聞こえる。