「先生」
「……今さら生徒面かよ」
引き締まった二の腕は、気をつけをするように床に垂直に下ろされている。惜し気もなく、その仄かに色付いた皮膚が剥き出しになっていた。鎖骨辺りに汗が光った。白とピンクの幾重ものレースで覆われた、小ぶりの胸。肩紐にはハートの刺繍、黒いレースが胸元を囲むようにしている。ごてごてと飾り立てられた印象を受ける。品行方正、文武両道。真面目な性格は決して短くないスカート丈や高く結わえられた黒髪に明らかであったはずだ。自ら下着姿を晒しておきながらいまだに俺を先生と呼ぶ、その頑なさすらも。
「そういうとこだけは譲らねェのな」
距離をつめるわけでもない。ただ黙って立ち止まって、俺を見上げている。手を伸ばせば頬に触れられる間隔、感覚。
「呼べよ、名前」
気付けば俺ばかり喋っていて、それが気にくわなかった。無表情を装いながら実のところ動揺しているのだ。他の女子生徒と同じ制服の下に、少女の芳香が色めき立っていた。校門が施錠されるまで、あと少し。