「ガキみてえな食い方」
目の前の彼は、わざとか知らないが煙を除けるわけでもなく、それを吐き出しながらようやく口を開いた。右の膝に乱暴に左の足を乗っけて、浅く腰かけたその格好はどこぞのチンピラだ。
「はしたないのね」
「お嬢さんよォ、そりゃ褒め言葉のつもりか」
「いいえ」
左腰にぶらさげた刀の柄に手をかけると、彼がにやにや笑いのままに煙草を落とし、右足でその火を踏み潰した。じゅ、と嫌な音がする。
「お前が男なら真っ先にうちの隊にしょっぴいたんだがな」
「私は異三郎の下にしかつかない」
「大した忠誠心なこって」
二本目の煙草は右手に弄んで、無造作な前髪が目にかかっている。
「…女扱いもいらない」
「女扱いも何もてめえは女だろうがよ」
「それでわざわざ私をからかいに来たの、鬼の副長さん」
「まあなんだ、からかいついでに一手やりあうのも悪かねえだろ」
口の端をニヒルにあげる悪ガキのそれは、異三郎のそれに少し似ていた。