「歩生、いいか……よく聞くんだ」

どくり、どくりと自分の中でただ只管に渦巻く鼓動。あぁ、生きているのだ。と、単純に、そう理解した。血に塗れた父の両の手が、優しく頬を撫でる。温かい、大きな手。操縦桿を握り続けた、力強い、手。途切れそうな、意識を必死に繋ぎとめる。

「お前は、私達の希望だ……」

霞む視界の中で、優しげに笑う顔が歪んだ。
切なげに、苦しげに。
そうして、殊更、愛しげに。

「だから……どうか――」


From A to Z



続く言葉は、眩いほどの閃光と、鼓膜を破るような轟音の中に消えた。
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