ロマンスの素粒子
胸の高鳴りがおさまらない。身体の真ん中で、確かに熱く響くこの気持ちに、一体何と名をつけたらいいのだろうか。一晩経っても二晩経っても、冷めない熱に浮かされて、どうしようもないこの想いを、自分は一体どこへ向ければいいのか……そんな時だった。

「ああ、もしもしーー?」

自信に満ち溢れた声は直ぐに誰だか分かった。一体全体どこからこの番号を突き止めたのか……いや、彼女のそばに控えていた敏腕マネージャーを思い出せば納得するより他にない。そして、どこかツンと棘っぽくて、不本意な色をみせる物言いで、あんた今何してるの?だなんて。電話口に名乗ることすら知らないのだろうか。
相変わらず可愛くない、そう思った気持ちは静かに飲み込むことにした。あの日感じた彼女の音楽への姿勢に百歩譲って。

「いや……特に、は」
「ならちょっと今から来なさいよ。どうせ学生なんて、勉強以外にやることなんてないんでしょ?」
「お前なぁ。今ので世の全学生を敵に回したぞ?」

おだまり。
ピシャリと言い放ったシェリルの声の少し向こうで、小さく揺れる笑い声。例えるなら、初夏の縁側で揺れる風鈴のような……優しくて高らかでまぁるい、そんな声だった。
「いいから、黙って来なさいよ!じゃなきゃあんた、一生後悔するわよ?」
「あーはいはい。分かったからギャンギャン吠えるなよ。銀河の妖精が聞いて呆れるぜ」
「っ……いちいちムカつくやつね!」

それから一体どこに行けばいいのか、すっかりご立腹のシェリルから聞き出すまでに約10分。移動時間が約1時間。呼び出された場所に到着した頃には、日もゆっくりと傾き始めていた。

地域でも広さで有名な森林公園の南の端。
白いコンクリートの階段を下って行くと、半円形のステージが広がり、おそらくその階段は客席にもなるのだろう。正直、こんな場所があるとは知らなかった。小さなオーケストラすら十分に行うことのできるスペースがある。
そんな中、見慣れたコーラルの髪を揺らせたシェリルが、中央の一段目に腰掛けていた。此方の気配に気付いたのか、ゆったりと振り返り、そして酷く綺麗に笑う。


「It's show time!!」


パチン、と小気味のよい音がその細い指先から響き渡った。

2016 Takaya
弾けて、弾んで、煌めいて
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