愛も恋も知らないしそんな感情は私には必要の無いものである。 それなのに、コワルスキーは私に対して愛を囁くのだ。 科学で証明できない愛を。
「毎度毎度飽きないのかね」 「貴様に愛を囁くことがか?飽きることを知らないようだ」 「前々から頭がおかしいとは思っていたがここまでとは…失望したよコワルスキー。私たちは敵同士だ」 「それがどうした?」
どうしたではない。コイツは本当に何を言っているのだ。私を後ろから抱え込むコワルスキーは髪に口づけたようだった。小さなリップ音が恥ずかしい。薄紅に染まった頬を見られぬように俯いた。目を瞑ると自分の中の自分が悲しそうにこちらを見ていた。頬を染めることを責めるような瞳に心臓を貫かれたようだった。私は愛も恋も知ってはいけない。そんな感情は不必要だ。 油断している今ならこの男をどうにかできる。それなのに私の腕は、この足のように動いてくれない。愛なんて知らない、恋なんて知らない。それを知ってしまった私は、誰に必要とされようか。
(このまま、自分の心臓ごと、この男を貫ければよかったのに)
嗚呼、悲しき恋哉
2013/04/29 07:30
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