告白
靴箱の中に入ったラブレター。
送り主の名前はどこにも見当たらない。
テニス部のみんなに気づかれないように中身を確認して、指定された場所へと向かうとヒカルが立っていた。
長い黒髪が風に吹かれてゆらゆら揺れる。
ヒカルはその様をジッと見つめ、愛しいと感じた。
亮がヒカルの元へ行き、ラブレターを見せて誰か来なかったか、と聞くとヒカルは薄く開いていた唇をキュッとつむんだ。
隣に立った亮から、自分とは違った甘い香りが漂ってきてたまらない気持ちになった。
「その手紙、俺が出したんだ」
言われた瞬間に亮はヒカルの方を見たけれど、ヒカルは顔を背けて此方を向こうとしない。
「好きです」
天根ヒカルは初めて異性に自分の想いを告げた。
感情の分かりにくい顔だ、と亮は思った。
「好きだったなんて知らなかった」
「誰にも言ってないもん」
「そっか」
「…好きなんだ、亮さんのこと」
亮は後ろの大木に寄りかかって毛先を弄り始めた。
返事が無いことに焦りを感じたヒカルが亮の方を向く。
瞼を伏せた亮を見ながら睫毛が長い、なんて場違いなことを考えていた。
不意に開かれた瞼のせいで、ぬばたまの瞳と目が合う。
心臓が跳ねた。
「ダビのこと可愛い弟だと思ってたんだけど」
「ごめん」
「今日から、一人の男として見るしかないね」
「え…」
「惚れさせてみなよ」
制服のシャツを引っ張られて亮との距離がグッと近づく。
触れるだけの口付けにヒカルの心臓はバクバク音を立てて破裂しそうになる。
「剣太郎に見られたら怒られちゃうね」
クスクス笑いながら手を引く亮に尚も心臓を高鳴らせるヒカルは、今すぐ亮を抱き締めてもう一度口付けてしまいたい衝動に駆られていた。
(好きになって、よかった)
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2012/10/29 02:26