いろいろ | ナノ


満月の夜



※擬人化





時々思ふ。
この空虚から連れ去ってくれないかと。
攫ってくれ、この私を。誰も知らない場所まで、連れて行っておくれ。




「呼んだか、メッドよ」
「…いつもいきなりであーるな」
「予告状を作った方がよかったか?」
「そんなもの作ったら、犯人が貴様だとわかってしまう」
「予告状が無くたって、私を疑う輩はいるだろう」
「そうであーるな」


迎えが来た。
綺麗な満月の日。
きっとニコフは狼になっているんだろう。
一つの椅子に座った吾輩は、窓の外を眺めていた。
ガタガタと窓が鳴り、勢いよく開くと、そこには怪盗殿が。
嫌な笑みを浮かべて、手を差し伸べる。


「君を攫いにきた」


入って来ようとすれば入って来れるのに、その場から動こうとしない。
攫うと言っているくせに、無理やり手を取ろうとしないなんて、意地が悪い。


「攫いに来たのだろう?」
「お前が望んでいるからだ」
「なら、早く攫ってくれ」
「こちらに来て、手を取れ。」


ドラパンの背後にある光輝く満月のせいで、彼の表情を確認することができない。

椅子から立ち上がり、ドラパンに近づく。
カツカツと靴音が響く。
靴音と、風と、自分の心音。

ドラパンの目の前に立つ。
差し出された手に自分の手を重ねようとしたら、勢いよく手を引かれた。
指の間にドラパンの指が入ってきて、力強く握られた。
腰を抱かれて距離がゼロになる。


「さぁ 誰も知らない場所に行こう」


満月の夜、吾輩は怪盗殿と消えました。






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2012/10/27 23:14



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