カチャカチャカチャカチャカチャ
 洗っても、洗っても終わっていかないお皿達。ようやく追いついたと思ったら次のお皿がやってくる。
 飲食店の裏方ってこんなに大変だったのか。段々、手荒れが気になってくる。せめてハンドクリームを買えるくらいには稼いで帰りたい。
 別に悟浄さんに言われたからとは言いたくない。ただ世間知らずのままあの人たちの中にいるのは違うのでは無いかと思ったから、人生経験をしておこうと思ったのだ。
 それにしても、今のところ苦痛でしかないし、そろそろ足も痛くなってきたから座りたいけど、無情にも積まれていくお皿。もう、今日はいろいろ諦めようと心を無にして、次のお皿へと手を伸ばした。


「お疲れ様でした。はい、これ」

 渡された茶封筒には世間的には一日で稼げる分が入っているのだろう。その薄い茶封筒を手に私はハンドクリームを買うべくお店へと向かった。


 ハンドクリームを買えば、残るはちょっとしたいいおやつを買える程度。ご飯は三仏神のカードがあるからまぁ、いいや。五人で食べられそうな美味しそうなデザートを探していると、向かいのお店に目がいってしまった。私の視線の先には、小さな箱が陳列されている煙草屋。ふらっと立ち寄っただけなのに、私の手にはハイライト。……マルボロは、まぁいいか。
 手元に残ったお金は、旅の足しにでもしよう。あんなに疲れていたのに、なぜか足取りは軽い。これが普通の感覚なのかはわからないけれど早く悟浄さんに会いたくなってしまった。


 滞在中の宿に帰ってこれば、部屋にいたのは悟浄さんだけだった。聞けばみんなそれぞれ用事があり出て行ったのだとか。

「そういえば、ういちゃん今日朝から出てたけど何してたの?」

 特にみんなに行き先を言っていなかったので、なぜか急に言いずらくなってしまう。照れくさくて、手に持っていたハイライトを黙って悟浄さんの前に置けば、何かを察したのか「サンキュ」と一言。まだ手元の煙草には、残りがあるのにわざわざ私が持ってきた煙草の封を開けて美味しそうに吸い出すものだから。何だか悪くは無いのかもしれないと思わず笑ってしまった。


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