三蔵の気まぐれで助け出されたういちゃんは、ああいうお店にいながら意外にも不当な扱いを受けていなかった様で。要は結構なお嬢様育ちで育ってしまっていた。なので、俺たちみたいな野郎四人旅なんかは、まぁ言わずとも肌には合わないわけで。
 安宿のベッドなんかで寝られないとういちゃんは睡眠不足が続いているようで、少々ご機嫌斜めだ。

「ういちゃん」
「何ですか、悟浄さん」
「また、寝られなかった?」
「はい。そろそろフカフカのベッドで寝たいです。皆さん、よく寝られますね」

 少しカチンと来てしまうが、ういちゃんに悪気は無いのだ。大人になれ、俺。

「一応カードあるんですよね?」
「あるけど、八戒がうるさいのよ。そんなになら、八戒に直談判してみれば?」

 ういちゃんもこのパーティーに加わって数日。八戒にはどこか逆らってはいけない空気を感じ取っているようで俺から視線を逸らして苦笑いをしている。

「だから、私がお金を稼いできますって」
「だから! それは絶対ダメ」

 出会った当初からういちゃんがそう提案をしてくれるが、ういちゃんのお金の稼ぎ方ってソレしか思いつかないものだから。それで稼いでいたらあそこから助け出した意味が無くなってしまう。

「悟浄さんだって、女の人とよく遊んでるじゃないですか! 何で私がダメなのか教えて欲しいです」
「ダメって。……ういちゃんは嫌じゃないの?」
「……だってそれしかお金を稼ぐ方法わからないから」
「あのね、世の中にはいろんな仕事があるの。例えばこの宿の皿洗いとか部屋の掃除とか……」
「それでいくら稼げるんですか?」
「……うーん、これくらい」

 大体の相場を伝えれば、ういちゃんは「えー」と机の上に項垂れた。一日で大金を動かしてた女の子からすればうんざりだろう。けど、それはういちゃんが異常なだけであって。

「ういちゃん、世間からすればそれが普通よ」
「それはわかってるけど、そんな途方もないこと……。っていうか悟浄さんからすれば私の事なんて関係ないのに何でそんなに突っかかってくるんですか?」
「何でって……。せめて毎日顔付き合わせてる人くらいは心配させてくれてもいいじゃない? ういちゃんだってあそこのお店出た時、仲間の心配してたじゃない」
「……そうですけど」

 なんとかまた引き留める事に成功はしたが、いつういちゃんが勝手に動いてしまうのかと俺の心配はきっと尽きないのだろう。


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