「うい、行くぞ」
「んー、だるい……」

 学生服姿の男の子は幼馴染で親戚のういを迎えに部屋まで来ていた。ういも学生服に着替えたはいいものの体がだるくベッドから起き上がれないでいた。
 それもそのはず。外は大雨。ういに憑いてる白猫が雨を嫌うのだ。はとりは枕に顔を埋めて横になっているういから降りしきる雨へと視線を送る。

「確かに雨の日は仕方ないかもしれないが」

 ベッドの端に座ったはとりはういの頭を撫でる。

「そろそろ出席日数足りなくて、留年するぞ」

 はとりの言葉に反応するようにういは枕を握りしめて静かに言った。

「いいよ。どうせ将来なんてないんだし」

 肩でため息をついたはとりは、ういの腕を少し強引に引っ張って起き上がらせた。ういの濡れた瞳は突然の事に見開いている。

「そういう事を言うな」
「でも事実だよ? はとりがどうにかできる問題でもない事はわかってる」

 ういの言葉を遮るようにはとりはういを抱きしめた。力強く抱きしめられたその腕は震えている。

「ごめん。言い過ぎた」
「いや。ういの言う通りだ」

 抱きしめていた腕を離してサッと立ち上がる。

「それで、今日はどうする」
「あとで追いつくよ。先行ってて」
「わかった。後でな」

 はとりは部屋を出て行った。ういはその後ろ姿を追いかけようと足に力を入れてみるが、やはり足がすくんでベッドの上にとどまる事しか出来なかった。


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