犯人を追いかけ、逼迫した空気。そんな中、言い争う声がどこからか聞こえてくる。
「零があそこでいらない事するから犯人が逃げたんでしょ!」
「僕の判断が間違ってたと? それを言うならういの到着が遅れたのも原因だと思うけどね」
「あれは別で事が起こっちゃったからしょうがないでしょ! これでもこの逃走を最小限には抑えたつもり……」
急に目の前の路地から飛び出してきた犯人。二人は言い争いを止め、手元に持っている拳銃を構え、犯人に銃口を向けた。反対方向へ逃げようとする向こう側、犯人が飛び出してきた路地からも仲間が追いつき挟み撃ちは成功。無事、犯人は逮捕された。
二人は周りにこれからの指示を出し、少し一息という所で、部下が一人、二人の元へやって来た。
「あの降谷さん、上杉さん」
「お疲れ様。どうしたの?」
「その後輩の私が言うのも何ですが犯人を追いかけてる時のお二人の言い争う声が大き過ぎて犯人にこちらの居場所がバレてしまうと思いまして」
部下の言う事はごもっとも。二人は気まずそうに顔を見合せた。
「すまなかった」
「今度から気をつけるわ」
「それでは」と部下は犯人を乗せた車の助手席へと乗り込んで行った。
「ういの声は大き過ぎるんだよ」
「二人って言ってたじゃない。零の声も大きかったのよ。私のせいにしないでもらいたいわ」
売り言葉に買い言葉。また始まったと周りは目線を送るがそんなのは日常茶飯事で。慣れたようにそれぞれの業務へと戻っていく。それでもまだ二人の言い争う声は周りに響いていた。