一度すれば懲りると思った俺がバカだったらしい。思春期の子ども、ましてや女子高生なんて自分が何をしても大抵の事はブランド力で許してもらえると思っているのだ。
 三時間目の始まりのチャイムと共に上杉は頭が痛いと保健室に現れた。ただ、最初みたいな怪しげで甘い雰囲気は消えている。本当にただサボりたくて保健室に来る子どもと何ら変わりはなかった。ただ、上杉は何が原因でここに来るのは知らないが勉強が嫌というわけではないらしい。他の生徒はベッドの中で持ち込んだ携帯をいじっているのはバレバレだ。上杉は筆記用具とワークとノートを持ってやってくる。形式だけの問診を終えれば、俺の机の向かいに置いてある生徒用の椅子に座り勉強を始めるのだ。
 俺も自分の仕事が一段落した。上杉意外に生徒はいない。一応頭が痛いという事でここに来ているのだ。頭が痛いのに黙々と勉強している上杉に「頭の具合はどうだ」と聞けば、ノートから目を離さずに「んー、ちょっとよくなったかな」とノートに何か書き込んでいる。

「何ですか?」

 何となしに上杉を見ていたら知らない内に目が合っていた。あのベッドの上で乱れないていた上杉とは全く違う普通の生徒な瞳に軽く動揺を覚える。

「別に何も」

 ふっと軽やかに立ち上がった上杉は、隙を見せないまま俺にキスをして、いたずらっ子の様に歯を見せて笑った。呆然とする俺の気持ちを他所に上杉は机の上に広げていた勉強用具を片付けて、「そろそろ教室に戻りますね」と早々に保健室を後にしていった。


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