「何だ、そのおどろおどろしい曲」
「まぁまぁ、最後まで聞いててよ」

 そう言いながら、ピアノの鍵盤の上で指を踊らせる。俺は黙って、ういが弾き続ける曲を聞く。段々と明るい曲調になっていき、ういは満足気に弾き終え「my mood during this timeでした。ご清聴ありがとうございました」とペコッとお辞儀をした。
 my mood during this time. この間の私の心情。心当たりのあるそれに思わずため息をついてしまう。

「それはちゃんと説明しただろ」
「ちゃんとわかってますよ。ただこの時の気持ちを曲にして動画投稿でもしたらウケるかなぁと思って」

 俺としては複雑な心境だが、芸術家なんてみんなそんなもの。
 この間シュトレーゼマンの付き合いでキャバクラに行ったのだが、あの巨匠はあろう事かその時の際どすぎる写真をういに送り付けたのだ。ういもわかってはいても、まだ完全なお許しが出たわけではなさそうだ。「今度のデートは……」と楽しそうに高級店の名前を連ねるにういに俺は何も口出しができなかった。


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