仕事で失敗をしてしまった。しかも犯人を取り逃してしまうという大ミス。周りには気にしないでいいよって言ってくれる人のが多いけど、元々女が真選組になんて……という上の連中からすると今回の失態はとてもいい叩きの材料だろう。
 上に報告行ってくると出て行った近藤さんも何を言われているのかわかったものじゃなくて。とにかく申し訳なくて。
 やり場のない気持ちを抱えながら屯所の縁側に座っていると、煙草を吸いながらこちらにやって来た人物と目が合ってしまった。
 真選組・鬼の副長と恐れられる土方さんだ。
 この状況、どう考えても気まずい。けれど、その空気から逃げ出す勇気もないまま座ったままでいると隣に土方さんが腰をかけてきた。
 何も話しかけてこない土方さんに余計に気まずさが際立ってしまう。……逃げればよかった。
 とりあえず、今回の件について改めて謝ろうと土方さんに体を向けた時だった。

「大丈夫か?」

 意外にも飛んできた言葉が心配の言葉の類で思わず面をくらってしまう。
 そんなの、大丈夫ではない。

「……悔しいです。ただでさえ風当たりが強いのに。実力が伴ってない事が浮き彫りになっているし。強くなりたいです。けど、周りに取り残されてる気しかしなくて。どれだけ鍛錬してもやはりみんなには追いつかないんだとか力の差を知るばかりで……」

 弱音が止まらない自分に気づいて、はっとする。土方さんは何も言わずに聞いていたが、隊員の弱音を聞いていて気分がいいものではないだろう。

「上杉はよくやっていると思う。確かに今回の件は上司として目を瞑ることはできないが、それでどうこう思う奴らは少なくとも真選組内にはいねぇよ。もっと自信を持て」

 そんな思いもかけない言葉に目頭が暑くなってしまう。
 泣いてしまうところなんか余計見られたくないのに。
 涙を堪えるように少し上を向くと、土方さんが立ち上がり、私を励ますように頭を雑に撫でて去っていった。
 ……鬼の副長には敵わない。そう思い知らされてしまった。


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