丸い大きな瞳が俺を見上げている。目を合わせてもその女の子は何も言わないまま首を捻った。

「四木の旦那。この子は?」

 そう問えば旦那は窓の外を見ながら、「外で凍えてたから拾ってきました」と言う。つられて外を見れば、窓の向こうは朝から降り続ける激しい雨が目に入る。今日は一日中、雨だとかテレビで言っていたな。
 それよりも、拾ってきたって。ヤクザが子どもを拾ってくるなよと思うが、まぁこの子はこの子で何か訳ありなのだろう。四木の旦那の要件を聞いている間もじっと動こうとしなかった。
 用事は終えたし、帰るかと部屋を出ようとしたがどうしてもあの女の子の存在が気になってしまう。今も物音も立てずにじっとソファの上で三角座りをしている。旦那に目を向けても反応は無し。

「お嬢ちゃん、良かったらおじちゃんとご飯でも食べに行くかい?」

 首を縦に振った女の子を確認して、旦那の方を見遣れば「あまり遅くならないでください」と親みたいな言葉に少し笑ってしまう。子供からすると少し背の高いソファからひょいと飛び降りて俺の近くへと寄ってきた。「行こうか」と視線を下げれば小さく首を縦に振った。


「そういえばお嬢ちゃん、名前は?」

 適当にファミレスに入り、テーブルの上にはハンバーグやからあげ、フライドポテト、ステーキととにかく子どもが好きそうなものが所狭しと並んでいる。お嬢ちゃんが食い入るようにメニューを眺めていて一向に注文が決まらなかった結果だ。とりあえず、これだけあれば食べたい物はあるだろうと片っ端から頼んだはいいがさすがに頼みすぎた。残ったら持ち帰りにでもすればいい。
 そして気づく。お嬢ちゃんの名前を聞いていなかったと。フライドポテトを手で摘みながらこちらを見上げ、首を傾げながら「うい……」とポツリと呟いた。

「ういちゃんね……」

 フルネームを名乗らないのが気になるところだが、まぁ、それはおいおいでいいだろう。ういちゃんの視線がハンバーグに移ったようで、自分の近くにあったフォークを手渡せば「ありがとうございます」とたどたどしくお礼を言って、嬉しそうにハンバーグを食べ始める。

「美味しいかい?」

 そう聞けば、口の端にソースをつけながら、コクコクと首を縦に振ってまたハンバーグへとフォークを持っていく。美味しいなら、何よりだと店にかかっている時計に目をやる。旦那に言われた事を思い返しながら、旦那はこの先この子をどうするのだろうと勝手な心配をするのだ。


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