「よっしゃこーい!」
只今、演習中です。俺の相手は奥村燐。もっぱら噂のサタンの落胤だ。え?そんなの相手の演習怖くないかって?いや全然!むしろ…
「行くぜ!龍太!!!」
「うぉぉおおおおおお!!」
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「今日も互角か」
「燐!てめー、手抜いただろ」
「な、なんの事だよ?」
キョロキョロ目が泳いでんぞ。
そうなのだ。燐はなぜか俺に本気でかかってきてくれない。よって全然怖くない。寧ろムカつく
ぶっちゃけ、サタンの落胤とか俺にはどうでもいい。だって燐は燐だし。だからこそ本気でかかってきて欲しいのに。
「…本気でかかれるわけねーだろ」
「へ?今なんかいったか?」
ぼそぼそ喋ってなんも聞こえねーし
「悪いとは思ってんだ。本気の相手には本気で相手しなきゃ失礼だってこともわかってる、でも…」
「でも?」
燐は真っ直ぐこっちを見ていた。真剣な眼差しだった。
「俺、お前とは戦いたくない」
「あー、」
燐の言わんとする事が分かった。要は、俺の事を傷付けてしまいそうで怖い。そういう事か。
「馬鹿だなあ燐は」
「なっ!」
言葉では呆れたように言っても、俺は、にやけそうになるのを抑えきれないでいた。
燐はこんなに真剣に悩んでくれてるのに、俺、嬉しいと思っちゃってるわ。
「俺さあ、そんな弱くねーし、俺だって燐を守りたいんだぜ?」
「…っ龍太…」
「俺、守られるだけとか絶対嫌だ。そりゃあ、痛いのも負けるのも嫌いだけどさ、でも燐には本気でぶつかってきてほしい」
「………………」
欲を言えば、俺は燐より強くなりたい。燐を守れるように。
そのためには燐に手加減されてるようじゃ駄目なんだよな。
「俺、お前に傷付けられたりなんかしねーよ?怪我とかはするかもしんねーけど、そういう意味じゃなくてさ」
「……分かったよ。ごめん」
「あやまんなよー。燐は俺を大事に思ってくれてるから手加減してたんだろー?」
「うっ、ま、まあそうだけどよ」
照れて、ほんのり染まる燐の頬。
「俺も燐の事が大事だからな」
俺達は、お互いに照れたように微笑みあった。
(君を守りたいから)