雑食。夢 | ナノ




「よっしゃこーい!」

只今、演習中です。俺の相手は奥村燐。もっぱら噂のサタンの落胤だ。え?そんなの相手の演習怖くないかって?いや全然!むしろ…


「行くぜ!龍太!!!」
「うぉぉおおおおおお!!」



******



「今日も互角か」
「燐!てめー、手抜いただろ」
「な、なんの事だよ?」

キョロキョロ目が泳いでんぞ。

そうなのだ。燐はなぜか俺に本気でかかってきてくれない。よって全然怖くない。寧ろムカつく

ぶっちゃけ、サタンの落胤とか俺にはどうでもいい。だって燐は燐だし。だからこそ本気でかかってきて欲しいのに。



「…本気でかかれるわけねーだろ

「へ?今なんかいったか?」

ぼそぼそ喋ってなんも聞こえねーし

「悪いとは思ってんだ。本気の相手には本気で相手しなきゃ失礼だってこともわかってる、でも…」

「でも?」

燐は真っ直ぐこっちを見ていた。真剣な眼差しだった。

「俺、お前とは戦いたくない」

「あー、」

燐の言わんとする事が分かった。要は、俺の事を傷付けてしまいそうで怖い。そういう事か。


「馬鹿だなあ燐は」

「なっ!」

言葉では呆れたように言っても、俺は、にやけそうになるのを抑えきれないでいた。
燐はこんなに真剣に悩んでくれてるのに、俺、嬉しいと思っちゃってるわ。


「俺さあ、そんな弱くねーし、俺だって燐を守りたいんだぜ?」

「…っ龍太…」

「俺、守られるだけとか絶対嫌だ。そりゃあ、痛いのも負けるのも嫌いだけどさ、でも燐には本気でぶつかってきてほしい」

「………………」

欲を言えば、俺は燐より強くなりたい。燐を守れるように。
そのためには燐に手加減されてるようじゃ駄目なんだよな。

「俺、お前に傷付けられたりなんかしねーよ?怪我とかはするかもしんねーけど、そういう意味じゃなくてさ」

「……分かったよ。ごめん」

「あやまんなよー。燐は俺を大事に思ってくれてるから手加減してたんだろー?」

「うっ、ま、まあそうだけどよ」

照れて、ほんのり染まる燐の頬。


「俺も燐の事が大事だからな」


俺達は、お互いに照れたように微笑みあった。


(君を守りたいから)