「佐藤くん!お弁当作ってきたの!」
「あ、ありがとう」
不意討ちでこういうことが多々あるからいつも弁当の中身は少なめにしてる。二つくらい余裕なんだけど三つとか四つとかの時もあるからな。
「うーわ、流石イケメン佐藤」
「あ…」
そう言って俺が作った弁当から卵焼きを摘んで口の中に放り込むこいつは渡辺。誰にでも、あまり仲が良くない俺にもかなりフレンドリーな奴。
「女子から手作り弁当とか貰ったことねーよ」
いつも俺に嫌味を言ってくるけど、渡辺も結構人気ある。顔も良いし背も高いし、なんだろう、行動?とか、格好良い。
「じゃあ私渡辺くんに作ってあげよーか?」
「俺好き嫌い多いからかなり残すよ」
卵焼き、は、食べれるのか。
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「伯父さんのお嫁さんが金持ちの家の娘でさー、実家来るとゴディバとかくれるんだよ」
渡辺の声は遠くからでもはっきりと聞き取れてしまう。
「ホントお上品な人でさー、あーいうお嫁さん欲しいわ。手土産にゴディバ持ってくお嫁さん。」
「ゴディバ食いたいだけだろ」
「ゴディバ旨かったなー」
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持久走は得意でも苦手でもない。
「イケメン佐藤は運動もできるのな」
そういう渡辺も俺と同じペースで余裕だ。
「競争しようぜ、負けた方がジュース奢る」
「は?」
ペースアップして俺から離れる渡辺。
「ココア」
「……」
昼休みに自販機へ連れていかれた。俺いじめられてるみたいだな。
何だよ、渡辺アクエリ買ってる。ココアいらねーじゃん。
「あー、寒いからあんま水分いらなかったわー」
渡辺は俺の手からホットココアを奪い取った。そして空いた手に飲みかけのアクエリを置く。
「あったけー、さんきゅーな」
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最近オナニーを頻繁にするようになってしまった。
三ヶ月以上前に貰ったアクエリ。腐らないように冷凍してる俺ってもうダメだ。
飲み口にそっと唇を付ける。
「……」
罪悪感が凄い。でも少し舐めてしまう。そんな自分に呆れながら再び冷凍庫にしまった。
「…はぁ…ぁ」
これだけで身体が疼く。勃起する。なのに。
「ふぐぅ…ぅ…」
手は後ろへ。きっと渡辺のものなんて一生入るはずないのに、そこは常に求めていた。
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インフルエンザにかかってしまった。
渡辺が俺に話かけるのは週一回あるかないか。休んでる間にその機会を一回逃してしまったかもしれない。
「佐藤インフル大丈夫だったかー」
教室に入ってすぐ口に何かを入れられた。
「きな粉餅のチロル。うまい?」
「…あ、ああ」
「おー、やっぱね。俺も好き」
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「佐藤は大っ嫌い」
渡辺は近くに本人がいても容赦無い。
「モテ男をどう好きになれっていうんだよなあ」
「ただの僻みじゃん」
「そーだよそーだよ何か文句あるかブサイク。お前も嫌い」
「何で、俺ら仲良いじゃん」
「俺可愛い子しか好きじゃない」
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「久々の佐藤じゃん」
俺のクラスに来た渡辺にぽんっと背中を叩かれる。
「クラス離れるとなかなか会わねーな。あ、佐藤でもいいや。体育着持ってる?」
俺の、体育着を渡辺が。
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「佐藤くん、カラオケ行かない?」
いつもは行くけど、今日はやめとく。
「…っふ」
ベッドに寝転んで鞄から取り出した体育着を抱き締める。幸せ、かも。
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「さとー、誕プレ」
「ありがとー」
今日は誕生日。今年もたくさん貰ってしまった。友達からも女子からも。
立て続けの呼び出しに、いちいち期待してしまう。でも違う。だよな、俺の誕生日なんて知らないだろうし知ってたとしても何もない。
今日はカラオケで騒ぎまくった。
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クラスが離れてから確率は週一から月一に減った。
「佐藤の顔は忘れたくても忘れらんないな」
俺のアスパラのベーコン巻きが奪われた。
「体育着誰か持ってる奴いねー?」
「このクラスは今日体育無いよー」
「マジー?」
「俺あるけど」
「おっ、さんきゅー」
渡辺のクラスが体育の日は持ってくるようにしてて良かった。自分でも気持ち悪いと思うけど。
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今日はこの前より汗の匂いが強い。
「…ん…」
枕の上に敷いた体育着に顔を埋める。このまま一生寝れそう。
うとうとしながらも指を穴へ入れる。最近ここが綺麗になってなきゃ落ち着かない。だから一日一回は掃除する。今日は学校から帰ってきてすぐした。
「ふぅう」
指の本数を増やして中を満たす。折角渡辺が着た体育着を自分の体液で汚したく無いが、顔をずらした時シャツの下に重ねていたハーフパンツが出てきて、我慢できなくて股の部分を舐めてしまった。
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「私バレンタイン渡辺くんにチョコあげるー」
「渡辺くん格好良いもんね」
「だよね。この前話した時もいい感じだったし」
「明るいよねー。まあでも私は一人しかいないし」
ちらりとこっちを見られた。それよりも、あの子可愛いから、きっと渡辺も好きなのだろう。
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衝動的にやってしまった。
屋上は寒くて来てくれないかもしれないけど、ここしか思いつかなかった。
心臓がおかしくなりそう。来てくれなかったらショックだけど、来たら怖い。
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