6月の花嫁は天使でした


お互いの親族と、仲のよかった友達、そして烏野高校バレーボール部のメンバー。
比較的小さい規模での結婚式。大々的にやる資金がなかったというのもあるけれど、何より彼女がこぢんまりとした感じでいいと言ったので、俺もそれに倣うことにした。
一生の思い出になるんだから大々的にやってもいいのに、と言ったら思い出はこれからたくさん菅原と作っていくからいい、と正面切って真っ直ぐ言われてしまったので閉口するしかなかった。そんな嬉しいことを真っ直ぐ言ってくれた彼女が本当に愛おしい。

昨日までの天気予報では今日は晴れる、と言っていたのに朝窓から外を見れば生憎の雨模様。せっかくの結婚式だってのに、雨か……と気分が落ち込んだけれど、式場について着替えている内にそんなこと気にならなくなっていた。
むしろ緊張と嬉しさで何時にもまして気持ちが落ち着かなかった。
部屋中を歩き回り、しきりに窓の外を眺めては傍にあった椅子に座り、また立ち上がっては歩き回り、を繰り返す。
こんなんじゃだめだ、と落ち着かない気持ちを静めるために一度部屋を出た――ところで、ばったり清水と鉢合わせする。
あ、と思ったけれど何て声をかけたらいい?
清水、と呼ぶべきなのだろうか。
それとも潔子、と呼ぶべきなのだろうか。
夫婦であるなら清水はおかしい。でもまだ正確にはまだ式は始まっていないし、夫婦の契りを交わしたわけじゃない。
そうなると、どこからが夫婦で、どこまでが恋人なのだろう。結婚式当日にはもう夫婦と言ってもよいのか、それともあの宣誓が終わるまでは夫婦と言えないのか……。
ぐるぐると渦巻く思考。

「菅原、大丈夫?」

気付けば目の前に彼女。
心配そうに見上げてくるその顔は綺麗にメイクアップされていて、いつものクールビューティーとはまた違った雰囲気を見せる。
清水って化粧すると化けるなあ……。

「大丈夫。ごめんな、心配かけちゃって」
「別に。大丈夫ならよかった」
「なあ、しみ……潔子」
「何?」

返事をしてから彼女の顔が真っ赤に染まる。
殆ど無意識で返したのだろう。後になって“潔子”と呼ばれたことを認識して赤面するなんて、本当可愛いなあ。

「俺のこと、一生幸せにしてな?」

今思ってることを率直に、何の飾りも付けずに口にすれば彼女の顔はさらに赤くなった。

「それ、私のセリフ。…………孝支、私のこと一生幸せにして」
「おう、任せとけ!」

歯を見せて笑えば、彼女からも笑みがこぼれる。
ああ、幸せだ。俺、今すごく幸せだ。

「お二方、そろそろお時間ですよ」
「はい」
「行こう、潔子」

彼女の手を取って歩き出す。
この先楽しいことも苦しいこともたくさんあるだろうけれど、君となら乗り越えられる。

――今日、俺たち結婚します。



(君と一生、一緒だから)


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ついったーにて素敵企画「菅潔ウェディング企画」に参加させていただいたものパート1。他の方々の素敵な菅潔には遠く及びませんが自分なりに頑張って書いたのです!

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