タチアオイ―開放的


どうしてこんなことになってしまったのだろう。
大きくため息を吐き出す。
困惑する私の腰回りには先ほどから泣きわめいている白龍さん。
足下にはアリババさんがべたべたと貼りついているし、アラジンはテーブルの上に突っ伏して幸せそうな顔をして寝ている。面白いくらいの三者三様の行動。
でも、さすがの私もどう対処したものか悩む。
力にものを言わせれば白龍さんやアリババさんを引きはがすことなんて容易い。容易いけれど、なかなかどうしてそれが実行できない。
それは二人とも酔っているから。素面の時ならまだしも、酔っている人間に手荒な真似はできない……というよりしたくない。
普段であるならこんなの、やめてくださいと強制的に引きはがせるというのに。
もう一度ため息を吐き出す。
事の発端は――ああ、そうだ。マスルールさんといつもの部屋でお茶を飲みながら話をしているときだった。
お茶菓子がなくなってしまって、マスルールさんがどこかのお土産でもらったものだと言って見目鮮やかなチョコレートを出してくれたのだ。
そのチョコがまさかお酒入りだなんて知らずに食べた、私を除く三人はあれやこれやとしている間に完全に酔ってしまった。
アラジンはもともと子どもだし、アリババさんも白龍さんも決して酒豪というわけではなかったのだろう。

「白龍さん、アリババさんいい加減離れてください」
「嫌ですモルジアナ殿!! 大好きです離れません!!」
「うへぇ、モルジアナお前本当逞しい足だなぁ」

ダメもとで言った言葉ではあるけれど、こうも熱意のこもった返事とセクハラに満ちた返事を返されては逆に感心もしたくなってしまう。――しないけれど。
それにしてもいい加減どうにかしなくては、と思った矢先にアリババさんの体が持ち上がる。

「モルジアナ。こっちの二人をゲストルームに運んでくるからお前はそっちを頼む」

そう言うマスルールさんの肩には既にアラジンとアリババさんが乗せられていて、あっという間に室内には私と白龍さんが取り残された。
とりあえずこのままでは埒が明かないし白龍さんには少々大人しくしてもらいたいのに、未だに腰から離れてもらえない。
むしろ抱きつく力が強くなっているのは気のせい……?

「う、うう……モルジアナ殿ぉ」

今度は泣き上戸ですか……。内心でため息をつく。
叫んだり泣いたり、本当白龍さんは忙しい。

「白龍さん、少し向こうで横になりましょう」

なるべく優しく声をかけると小さな声で「はい」と返ってきた。
とてもじゃないけれど歩けそうな状態ではなかったので、白龍さんには悪いけれど抱きかかえさせてもらった。
多少暴れはしたけれど、すぐに無駄だと悟ったのか、大人しくなった白龍さんを連れて隣のゲストルームへ向かう。
そこはあまり使われる部屋ではないけれど、客人が寝泊りできるようにベッドと最低限の家具家電が揃っている。
大人二人が余裕で寝られるほどの大きさのベッドに白龍さんをそっと降ろす。

「大丈夫ですか?」
「はい、らいじょーう……で、す」

全然大丈夫ではなさそうだった。酔って呂律が回らなくなっているのだろう。
それにしても、先ほどまで騒いで泣いていたのが嘘みたく、今の白龍さんは物静かだ。やけに静かすぎると思ったら小さな寝息が聞こえてきた。
酔い疲れて眠ってしまったのね……。
小さく笑って私もベッドの端に腰かける。
沈むベッドの心地よさ。
サージャル邸のベッドもなかなかに良い寝心地だけれど、ここのベッドはさらにその上を行く。
そういえば、昨日は夜更かしをしてしまったのだったっけ。
大きく伸びとあくびをして、私もベッドに体を預けた。



(あなたの隣りなら、きっといい夢が見られそう)

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