この気持ちは何でしょうか


なんだろう、この気持ち。
もやもや? ぐるぐる? ざわざわ? どきどき?
冬実を見ていると心が落ち着かない。――落ち着かない?
落ち着かないとはどういうことだ?
一番最初に会った時ならまだしも、今の冬実は霊体だぞ。
それに、俺の存在――正確には血液だけど――をなくして自らの存在を保てないほどに弱体化してしまっている。
生身の、人間であった頃の冬実に心が落ち着かないのはわかる。
あの感覚は今でも鮮明に覚えている。
衝撃にも似た、あの強い感覚。

「なあ、冬実」
「なんですか、スタズさん」
「……いや、なんでもねえや」

部屋の片隅に座る冬実に声をかけてみるも、あの時の強い衝撃は訪れない。
だけどその代り、もやもややら、ぐるぐるやら、ざわざわやら、どきどきやら、いろんな気持ちが混ぜこぜになってやってくる。
苦しい。苦しい。
どうしたらこの変な気持ちは落ち着くのだろう。
――果たして落ち着くのだろうか……?

「冬実」
「なんですか」
「なんなんだろうな」
「はあ……? それは私が聞きたいんですが」
「だよなぁ」

大きくため息を吐き出す。
俺につられて冬実もため息を吐き出す。
真似してんじゃねえよ。

「スタズさん……その、今日はどうしたんですか?」
「どうもしねえよ」
「そうですか」

潔さが美徳なのは人間界だけだっつの。
まあ、そこが冬実らしいというか。控えめな態度で決して踏み込んでこない。
人の視線を、態度を、空気を見て自分のポジションをそこから一歩引いて見ている。

「腹減ったな」
「そうですね」

本当にそう思っているのか、それとも俺に合わせているだけなのかわからない。
まあ、言ってしまった手前何か食いに行くかと腰かけていたベッドから立ち上がる。
またしても俺に合わせるようにむこうも立ち上がる。

「何食うかな……またツチノコステーキかな」

独り言を呟く。
とりあえず飯でも食ってみたらこの変な気持ちも収まるかもしれないな。



(空腹だからこんな変な気持ちなんだ)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -