5月の16日


「日向、これやるよ」
「日向、これ」
「おー! 日向これ!」
「…………」

朝から立て続けに声をかけられたかと思ったら、皆が皆手にしていた物――大抵焼きそばパンとか自販機の牛乳とかを手渡してくる。
今日はオレに貢ぎ物を献上する日なのだろうか。
いくら戦国武将好きとはいえ、同じ部活の部員から貢ぎ物って……。自分で考えてそれはないだろとセルフツッコミ。
両手に花ならぬ、両手に食糧。これだけあればとりあえず昼飯を買わずには済みそうだけど。
一体全体どうしたというんだ。
状況が全く呑み込めないまま廊下を歩いて、ホームルームへと向かう。
その道中にまたしてもバスケ部。

「主将!」
「これ、どうぞ」
「お疲れ様です、これよかったらどうぞ!」
「食べてください!」
「どうぞ!」

矢継ぎ早にまたしても食料を手渡される。
最早腕の中に納まりきらずに危ういバランスでなんとか現状を維持している状態だ。
おいおい、これどうしろってんだよ。
こんなに食いきれねえよ……。
とりあえず落とすことなく自分の席へ着席できたから一安心だ。
落ち着いたところでこの大量の食糧をどうするか思案する。
さすがに貰いもんだから誰かにあげるというのは失礼だろうし。
どうしたもんかと頭を捻っていると、目の前に影ができる。
それは誰かがオレの目の前に立ったからできたものだから、当然自然な反応として顔を上げる。
今度は一体誰だってんだ。

「日向君。これ、あげるわ」
「……ああ、サンキュ」

目の前の彼女――カントクは優しい笑みでカードを一枚差し出した。
何気なく紙面に目を落とすと、そこにはこう書いてあった。
“HAPPY BIRTHDAY JUNPEI HYUGA”
その一文を読んで、漸く朝の部員からの貢ぎ物に合点がいった。
そっか、オレ今日誕生日だっけ……。
最近は部活が忙しくてそんなこと考える余裕がなかったけれど、確かに黒板の日付は5月16日になっていた。
自分の誕生日を忘れていたなんて、しかも自分以外の部員全員からプレゼント――と言う名の食糧ではあるけれど――をもらうまで気付かなかっただなんて、皆に悪いことをしたと思う。
ちゃんと礼の一つもしておくんだった。
あとであいさつ回りに行くか。

「日向君、お誕生日おめでとう。これからも誠凛高校バスケ部を引っ張っててよね!」
「おう! サンキュー、カントク!」

机の上にある誕生日プレゼントと手の中にあるバースデーカードに再び目を落とす。
部員一人一人からの気持ちがこもったものに自然と頬が緩む。
あいつら、食いもんばっかだなあ。まあ、そこがあいつららしいと言えばらしいか。

「あ、あとこれ」

そう言ってカントクがもう一枚、今度はポストカードを差し出してくる。
なんだ? まだあるのか?
不思議に思いながらもそれを受け取る。
そこに書いてある一文を見て、頬が一気に染まる。
反則だろ、これ……。

「予鈴なるから、またね」

当の本人は素知らぬ顔で自分の机に帰っていくけれど、オレ……今日一日幸せすぎて授業どころじゃねえや。



(誕生日おめでとう、順平!)


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日向くんお誕生日おめでとう!

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