とばっちりデスマッチ


「狛枝ちょっと殴っていいか?」
「いい笑顔でメリケン装備するのやめてくれないかな、日向くん」

コテージを出て一歩踏み出す前に殺気で気付いて顔を上げると、そこには真っ黒な笑みを浮かべた日向くんが右手にメリケンを装備して仁王立ちしていた。
なんだろう、僕何かしたかな。
最近の記憶を遡ってみても日向くんのマジギレゲージをマックスにするようなことはしていない気がするのだけど。
そもそも彼はゲージマックスじゃなくても僕のことを隙あらば、というか何か機会があれば殴ってくるのだからこの状況は致し方のないことなのだろう。
殴られるこちらとしてはあまり気分のいいことではないけど。

「参考までになんでそんなに怒ってるのか教えてもらってもいいかな?」
「狛江という字を狛枝と見違えたからだ」
「……それだけかい?」
「それだけでも十分な理由だろう」

そうだね。
君にしてみればそんなことでも僕を殴りにくる口実になるんだろうね。
改名しないと今後僕は狛江という字があるというだけでゲージを溜めることになってしまう。
とりあえず逃げ道を確認する。
僅かながら日向くんの両脇が空いているから隙をついてそこからこの戦線を離脱しよう。
今の日向くんに隙というものがあればの話だけど。

「そういえば、さっき七海さんが呼んでたよ」
「後で行くからいい」
「今すぐって言ってたけど。いいの? 七海さん、待ってるよ」
「じゃあ速攻だな」
「いい笑顔で言わないでってば」

日向くんは右足を引いて身体を捩じって本気の一撃の体勢に入る。
うわあ、その構えどこで覚えたんだよ。

「何か遺言はあるか?」
「そんな気遣い無用だよ」

肩をすくめて覚悟を決めた。
さあ、一発勝負のデスマッチ開幕。

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