だって、あんなにも空は青々しいのだから


妙だ。
先ほどから感じる違和感。
それは僕を昼寝から起こすのに十分なものだった。
舗装のされていない道なのだからガタガタと揺れるのは先刻から変わらないが、そこに加えて気持ち車体が傾いているような感覚。
それに気付いた時には、後の祭りであった。

「あー! パンクしてる!」

つんざくような声に思わず耳を塞いでしまう。
いくら郊外とはいえそこまで大声を出す必要はないだろうに。
ロゼットは一度運転席から降りてパンクの状況を確認する。
どうやら後ろタイヤに傷がついていたようで、それがここ最近の無理な運転と相まってとうとうパンクしてしまったらしい。
助手席からやれやれとため息をついていたら不意にドアを開けられる。

「クロノ、パンク直して」
「えー、やだよ」
「あんたは助手席で何もしてないでしょ! 私はここ何日も運転しっぱなしなのよ!」
「それはロゼットが前の町で……」
「シャラップ! さっさと直しなさい!」

放り出されるように車外へ。
まったく……。パンクくらい自分で直してほしい。
面倒事はいつもこっちに回ってくるんだもんなあ。

「ちゃっちゃと手を動かしなさいよね」
「はいはーい」
「はいは一回!」

まるで母親のようなことを言いながら当のロゼットは道端に寝転がって完全にお休みモードに入ろうとしている。
人に仕事をさせておいて自分はさっさと昼寝をしようと言うのだからほとほと参ってしまう。
確かに助手席でさっきまで昼寝をしてしまっていたから強くは言えないのは仕方のないことだと思うけど、どこの世界に悪魔にパンク修理をさせるシスターがいるというのだ。しかも自分はずっと運転をしていたと主張し、昼寝までする算段を立てているのだから困ったものである。

「パンク直ったら教えてー」

言うが早いか、彼女はさっさと瞼を下してしまう。
こちらの抗議の声など最初から聞く気などないし、言う気も最早ない。
ため息を一つこぼしてスペアタイヤと修理器具を車から降ろして作業にとりかかる。
何度もやっていることだから作業自体はものの15分で終わってしまった。
終了報告をしようと彼女の元へと歩み寄ってはみるものの――わかっていたこととはいえ、爆睡してしまっていた。
余程連日の運転が堪えたのだろう。
深い、深い夢の中に行ったきり、当分は帰ってきそうにない。
また一つため息をこぼして、そっと彼女の隣に腰かける。
青すぎる空と暖かな日の光が眠気を誘う。
これはロゼットのことをとやかく言えそうにない。
段々と瞼は重くなっていくのが自分でもわかる。

「ロゼットも寝ちゃってるし……。まあいいか」

誰に言うでもないそれを最後に、僕も彼女の隣で眠りについた。
二人して夕暮れまで爆睡してしまって、彼女にこっぴどく怒られるのはもう少し後の話。



(何で起こさなかったのよー!)


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今更ながら相互お礼。
かるちゃんいつもお世話になってます。

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