ペンステモン


「あほらぎくん、ここであなたに聡明な私がクイズを出してあげるわ」
「何気に彼氏を罵倒する癖どうにかならないのか!?」
「彼氏面しないでくれる?私の彼氏はもっと頭がよくてかっこいい人間であるべきはずよ」
「なにこれ僕泣いていい?」
「泣くのなら殺してしまえあほらぎくん」
「やめてください本当に僕死にそうなんだけど」

目の前の戦場ヶ原は嬉々としているけれど逆に僕の方はといえば既にボロボロ状態。会って10秒でここまで人を傷つけることができるなんてもはや才能だろ。
それに僕に対するハードル高すぎないか!?
なんだよ、頭が良くてかっこいいって!ひそかに僕のことを頭が悪くてかっこ悪いって言ってないか!?……いや、まさしくその通りなんだけど。
それにしても羽川の更生プログラムが効いていないのか知らないけれど、この毒舌本当にどうにかならないものだろうか。
一度羽川に抗議をしてみるか……。

「で、クイズってなんだよ」
「ん?ああ、クイズね」
「自分で言っておいてなんだその口ぶりは!もしかして単に僕のことを罵倒したかっただけなのか!?」
「阿良々木くんのことは四六時中罵倒したいと思ってるわよ。馬鹿にしないでちょうだい」
「いや、嬉しくないんだけど」
「まあ、クイズというのが阿良々木くんを罵倒するための口実ではないことは確かよ」

そこで彼女は小さく息を吸い込んで、人差し指を立ててウィンク。
ウィンクがここまで狂気的な行為だとは今の今まで知らなかった。
戦場ヶ原のウィンク、かわいいんだけど超怖い。

「今日は何の日だ?」
「……は?」
「解答時間は3秒。はい、3、2、1…」
「何の日も何も、今日はお前の誕生日だろ?」
「……」

一瞬の間。
まさか本当に答えるとは思っていなかったのか、彼女は目を丸くして驚愕の表情を貼り付けている。
そんなに驚くことだろうか。
彼女の誕生日なんだから覚えているものだろう。
いくら僕でもそこまで鈍くはないつもりだ。

「わ、私の個人情報がいつの間にか漏洩しているだなんて…!!」
「そっちかよ!」
「まあ、いいわ。この際個人情報漏洩は見逃してあげるとして」
「どこまで上から目線なんだよ、お前」
「阿良々木くん、私のことを祝いなさい」
「いや、最初からそのつもりでこうしてほら…」

僕は右手に持っていた小さな花束を差し出す。
それを受け取ってから、彼女は訝しむような目で検分する。
どんだけ信用ないんだよ、僕。
何も仕込んでなんかないっての。

「その花の花言葉な、“あなたに見蕩れています”なんだってさ」

その言葉を聞いた彼女は、ほんの少しだけ笑った。
だけどそれは一瞬だけで、いつもの仏頂面に戻ってしまったけれど。
その顔を見れただけでも、今日も彼女の罵倒に我慢した甲斐があったってもんだ。


(HAPPY BIRTHDAY,Hitagi!!)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -