「お、おかえりなさい、です」


大学も四年生ともなればあとは卒論執筆とその提出くらいしかやることがなくて、でも無防備に寝ている谷地さんのおかげで家にいることもできずに朝早くに飛び出すようにして大学に来てしまった。
俺と谷地さんの関係が先輩後輩以上のものであったのならもう少し寝顔を眺めていたりだとか、一緒に朝食を摂るだとかできたのだろうけれど、生憎そんな素敵で羨ましい関係には現段階ではなっていない。俺としてはなりたいという思いがあるけれど、失恋をして傷心している彼女に気持ちを伝えてもきっとなあなあにされて終わってしまう。
心に一区切りができて、ちゃんと新しい恋をしようと前を向いてくれた時に言葉にしなければこの想いは届かない。万が一届いたとして、受け取ってもらえるかはまた別の問題だけれど。

「……寒い」

大学にたどり着いたのが七時半。一限目の講義もまだ始まらない時間だからか構内には数えるほども人がいなかった。というより見渡す限り人の姿なんてなかったというのが正しい。
昼間は人で埋め尽くされるカフェテリアも学食も今は静けさが包み込んでいて、どこか寂しさを感じる。
よくあるゾンビ映画とかパンデミック映画で見る、世界中の人間が突然いなくなってしまったという状況はきっとこんな感じなのだろうか。好きな人も嫌いな人も自分とは無関係な人もそうでない人も、誰も彼もが忽然と姿を消してまるで最初からそこに存在しなかったかのような、静かで最低限の音しかないような寂しくて何もない世界。
そんな、誰に話してもしょうもないと言われそうな妄想をぼんやりと頭の中で展開させながら、三号館の前のベンチに腰かけて一つ息を吐き出す。一瞬目の前を白く霞ませたあと瞬く間に冬空に溶けていく。
それを追いかけるように視線を上げれば雲一つない晴天が広がっている。青々としたキャンバスは俺の妄想なんて笑い飛ばしているかのように澄み切っていた。



なんやかんや卒論に関する調べものをしていたら当初帰る予定だった時間を大幅に過ぎてしまった。
まあ、谷地さんはもう帰っただろうから部屋に誰が待っているわけでもないし、こういう時は一人暮らしの気楽さが身に染みる。だけどそれが逆に寂しさを感じさせることにもなっている。
実家に居た頃は家に帰れば誰かしら居たし、家のドアを開ければ奥から「おかえり」が聞こえてきた。家を出るまでそれが普通だと思っていた。いざ一人暮らしを始めてみて、漸くそれが普通ではないことを知った。
「おかえり」は誰かがいなければ言ってもらえない。そんな当たり前のことをこの歳になるまで気付けなかった。
部屋のドアを開けて真っ暗な部屋に「ただいま」と言う寂しさや空しさは今でも慣れないけれど、これも時間が経つにつれて薄れていく感情なのだろう。大丈夫、時間が解決する問題だ。いずれ慣れる。
それに今更実家に舞い戻れるかと言われたらそれはできない話だ。実家からでは大学に通うことは困難とは言わずとも苦労はするし、内定をもらえた企業も現住所から比較的近いところだ。これも実家からでは電車を二本三本乗り換えなければならない。
来年には社会人になるというのに電車の乗り換えが面倒だ、と大きな声で言うことはできないけれど徒歩圏内で行けるところであるならば楽をしたいというのは本音中の本音だ。東京の通勤ラッシュ時の電車の混み具合は慣れた人間ですら苦痛だ。避けられるものなら避けたいところだし、楽を覚えてしまえばどうしてもその誘惑には勝てないのだ。
そして別の誘惑に負けた俺は自室がある三階までをエレベーターで昇ることも覚えてしまった。ちょうど一階で止まっていたエレベータに乗り込んで三階層のボタンを押し込み、上からの重圧に耐えること数秒。ドアが開くと同時に一歩踏み出して廊下の突き当たりを目指し進む。
鞄の中から鍵を取り出して鍵穴に差し込み回す。異変に気付いたのはその直後だった。
確か俺は鍵を“開けた”はずなのに、ドアノブを握り下ろせば、ガチャリと鍵のかかった手ごたえが返ってきた。いつもなら下まで下りるはずのノブは中途半端なところでがっちりと止まってしまう。
おかしい。朝出る時はちゃんと鍵をかけたはず。いくら朝早く出てきて頭が覚醒しきっていなかったと言っても鍵をかけ忘れるということはないはず。確証はないけれど、おぼろげな記憶をたどってなんとか結論付ける。
ということは――空き巣か?
考えたくない方向へ思考が向いてしまいドアノブを握る手に汗が一気に噴き出す。万が一空き巣だったとして、撃退できるか……? 今の手持ちで武器になりそうなものは背負っている鞄くらいしかない。
もし相手が何かしら凶器になりそうなものを持っていたとしたら? 持ち込んでいないにしても部屋の中を探せば包丁だってカッターナイフだって見つけられる。いわばこちらの手持ちは無いに等しいけれど、むこうはなんでも揃っていると言っても過言ではない。
やばいんじゃないか……? 管理人さんに連絡するか?
どうするか決めかねてひとまずドアノブから手を話したまさにその時だった。
ガチャリ、という音と共にノブが傾いた。いや、ノブがひとりでに傾くはずもなく、それはつまり部屋の中から鍵が開けられドアノブが下ろされたということ。
やばい……!
一歩後ずさるのと同時にドアの隙間から控えめに色素の薄い髪が見えた。

「お、おかえりなさい、です」
「え、あ、え……?」

久しく聞いていなかった「おかえり」という言葉に目を白黒とさせている間にドアを開けた、俺が空き巣ではなかろうかと疑っていた人物がゆっくりと顔を出す。

「赤葦さん……?」

眉尻を下げて、不安を孕んだ申し訳なさそうな声色が迎えてくれる。今日の朝見たばかりの彼女の顔をまさか間違えるはずもない。
でも彼女は自分の家に帰ったはず。じゃあそっくりさんか? いやいや、そんなはずはない。
そもそもの問題としてこの部屋の鍵は今朝テーブルの上に置いてきたものと俺が今手の中に握りしめているものの二つしかない。じゃあやっぱり目の前の彼女は――?

「谷地さん?」
「はい、谷地です」
「本物?」
「本物です」
「帰らなかったの?」
「帰りました。それでまた来ました」
「え、いや、だって……」
「あの、外寒いですから……その、お話は中に入られてからの方が……」

谷地さんの控えめな提案に、忘れていた寒さを思い出して身震いする。ひとまず部屋に入ることを選択し、一歩二歩と進んで玄関まで入ると、谷地さんが手を離したのかバタンという音と共にドアが閉まる。
それと同時に始まる沈黙の時間。一度区切られてしまった話題をどう掘り下げたらいいんだ。

「赤葦さん」
「あ、はい」

この状況の打開策を考えている最中に話しかけられたものだから返答が何故か敬語になってしまった。

「おかえりなさい」
「……ただいま」

笑みと共に紡がれた、おかえりという言葉。大学に入学してから昨日までずっと暗い部屋に向かって言っていた、ただいまを今日は明るい部屋でずっと想いを寄せている谷地さんに向かって言っている。たったそれだけのことなのに不覚にも泣きそうになる。
ああ、やっぱり俺寂しかったんだと実感すると同時に谷地さんへの想いが胸いっぱいに広がる。高校からずっと好きで、今もその想いは変わらない。だから今のこの状況が例え今日限りのものだったとしても、まさに泣くほど嬉しいし、幸せで満たされている。
このまま話していてもよかったけれど、自分の部屋の玄関で立ち話というのもなんだかおかしな話だ。
靴を脱いで廊下に一歩踏み出せば途端にいい香りが漂ってくる。これは肉じゃがか……? というより今の今までなんで気が付かなかったのだろう。目の前の谷地さんに気を取られ過ぎだ。

「勝手ながら台所をお借りして夕飯を作ってみたのですが、お腹空いてますか?」
「うん、お腹減った」
「じゃあ準備しちゃいますね!」

そう言って谷地さんはくるりと踵を返して部屋の奥へと行ってしまう。その背中を追うように靴を脱いでいそいそと向かえば、暖かい空気が迎えてくれる。自分の部屋だというのにまったく別人の部屋に迎え入れてもらったような感覚。誰かが居てくれるというだけでここまで違うものなのか。
先に洗面台に行って手を洗い、部屋の隅に鞄を置いて台所――というにはいささか心もとないスペースに目をやる。楽しそうに鼻歌を歌いながら、コンロの火を見る谷地さん。
にやけそうになる顔を必死に制して、部屋の真ん中にテーブルを設置する。必要最低限の物しかないからか、座るスペースを作るのは容易い。
丁度の頃合いで谷地さんがこちらへ視線を向ける。

「あの、赤葦さん。御椀とかって……」
「そこの流し台の下にあるけど……ちょっと待って」

そういえば谷地さんがナチュラルに料理を作っているから勘違いしそうになるけれど、よく考えてみたら俺一人分の食器しかなかったんだった。でも横目でコンロを見てみたけれど、どう考えてもその量は二人分だ。つまりは今夜も谷地さんと夕飯が食べられるというわけで、それ自体は嬉しいの一言なのだけれど、如何せん食器がない。あるにはあるが御椀系は二つしかない。あとは平皿か小皿かというところ。不格好ではあるけれど、あるものすべてを使えば今夜の食事はなんとかなるのかもしれない。流石に味噌汁を平皿によそうと大惨事になりそうだから俺が鍋で谷地さんに御椀を使ってもらうとしても、箸ばかりはどうにもならない。割り箸のストックは果たしてあっただろうか。
記憶を辿りながら流し台の下からありったけの食器を出していると谷地さんからストップがかかる。

「私、自分の家から食器を持ってきてるのでそんなに出さなくても大丈夫ですよ! たぶん煮物を入れるような深くて大きめのお皿もないんじゃないかと思いましたので買って来ましたし!」

そういう気遣いができるところが女の子らしいというか、マネージャーとしての経験もあるのだろうか。何にしてもありがたいことに変わりはない。
谷地さんは手にしている器に肉じゃがを入れ、俺は彼女から受け取った御椀にご飯とみそ汁をよそう。手早くそれらをテーブルに並べて向かい合って座り、手を合わせて二人一緒に声を揃える。

「「いただきます」」

まずは味噌汁を一口。ああ、すごく美味しい。塩加減もちょうどいいし、こんなに具材たっぷりの味噌汁は久しぶりだ。よくCMで見るような有体な言葉での表現になってしまうけれど、体に染みる。いつもインスタントの味噌汁ばかり飲んでるからか、手作りの味噌汁なんて久しぶりだ。これだけでもご飯が進みそうだ。
続いて肉じゃが。ちゃんと味がしみているしこれもまたご飯が進む味付けになっている。だけど谷地さんらしい優しい味付けに自然と口角が上がる。
こんなちゃんとした晩ご飯、家を出て以来だ。

「お口に合いますか?」

控えめに紡がれた言葉は少しばかりの不安が混ぜられていた。自分の料理の腕にまるっきり自信がないわけではないのだろう。だけどそれを他人に食べさせるのであれば話は別だ。食べる相手の好みと自分の好みが合致するとは限らないのだから。
だからそんな不安を取り除く意味も込めて、出来得る限りの笑みを作って回答する。

「美味しいよ」
「ありがとうございます! それで、その……昨日の話なんですが」

どうにも夕飯を食べながら話せる話題ではないことを察し、真剣モードな話し合いの雰囲気に手に持っていた茶碗と箸を置いて居住まいを正す。
昨日の話とはいったい何を指してのことなのだろう。
居酒屋でのことか、泥酔して男の部屋で一晩を過ごしてしまったことか、それとも……?
「昨日は本当にすみませんでした!」

いきなり谷地さんが視界から消える。何年経っても抜けない癖なのか、テーブルの向こう側に彼女の背中が見える。土下座なんてそう易々とやるもんじゃない、なんていくら言っても聞いてもらえそうにないから黙っておこう。

「居酒屋さんでのことといい、泥酔して一晩泊めていただいたことといい、赤葦さんには多大なるご迷惑をおかけしてしまい本当にすみませんでした! ちゃんとお詫びしたかったのとお礼をさせていただきたかったのですが、何を差し上げたらいいのかわからず、ひとまず何もしないよりかはと思いこうして夕飯を作らせていただきました所存です……。つきましては不肖谷地仁花、誠心誠意赤葦さんにお詫びさせていただきますので何なりと仰ってください!」

谷地さんって相変わらず謝罪会見でも通用しそうな言葉回しだよなあ。もっと軽い、昨日はごめんね! みたいな感じでいいのに。まあ年上というのと元他校ということもあってのことだろうけれど、人に対して決して礼儀を忘れないというのはきっと彼女のいいところなのだろう。少し寂しい気もするけれど。

「別にいいよ。昨日も言ったけどあれは失恋者同士の愚痴りあいみたいなものだったし、それに誘ったのは俺の方だから。あんなふらふらになるまで呑ませた責任もあるし、おあいこだよ」

そう、俺にだって責任はあるのだ。谷地さんの許容範囲を理解していなかったとはいえ、その場のノリに任せすぎた。その点ではむしろ謝られるよりも怒られる方だというのに。

「ですが……」

それでも彼女の瞳は控えめに、しかし意思の強さが感じられるものだった。

「……じゃあ、またこうして美味しい手料理をご馳走してくれるかな」

ありったけの勇気を振り絞った。引かれるかもしれない、拒まれるかもしれない。そんな後ろ向きな思いに蓋をしての精一杯の言葉。
俺がいくらいいと言ったところで谷地さんの方は絶対折れないだろう。それはもう確認した。ならば何かしらの提案をしなければこの場を収めそうにない。だから下心ありありで、でもそれを悟られないように妥協案のような形で要望を口にした。
彼女の手料理が美味しいのは本当だ。これは嘘偽りない。こんな料理を毎日食べられたらいいなあと思う。そこに、彼女を慕う想いを隠し味として入れた。
“またこうして美味しい手料理をご馳走してくれるかな”の中に“谷地さんに会う口実を作りたいんだ”を密かに入れ込んだ。
せっかく東京という広いようで狭いところで、何の偶然かはたまた運命か、また出会えたのだ。このチャンスをみすみす逃してしまいたくはない。
高校の時は合宿中だけの付き合いだと思っていた。卒業すれば必然的に会わなくなるだろう。だからこの想いもいつか淡く薄れていくだろう、と。
そう思っていたのに、高校を卒業しても大学に入学しても今日までずっと谷地さんのことを想っていた。忘れることなんてできなかった。良い思い出として心の奥底にしまいきれなかった。
この四年間、何度も宮城に赴こうとしたけれど、合宿中くらいしか顔を合わせることがない、知り合いよりもちょっとレベルが高いだけの関係の俺が行ったところで果たして彼女はどう思うのだろう。おそらく名前は覚えてくれているだろう。だけど所詮はその程度の関係で、再会を喜んでくれるとは到底思えなかった。誰がどう見ても俺からの一方的な好意でしかないのだ。
だから昨日、コンビニの壁にもたれ掛っている谷地さんを見とめて、夢なんじゃないかと思った。宮城にいるはずの彼女がここにいるはずがない――と。でも特徴的な色素の薄い髪とかわいらしい体躯、大学に入って化粧をするようになったのか前よりも少しだけ大人びて見えたあの顔は見間違えるはずがない。高校時代、あんなにも目で追っていたのだから。
後はもう衝動だった。久しぶりに話す谷地さんはやっぱり谷地さんで、どこも変わらないあの時の――俺が好きなままの彼女だった。
ただ、一つだけ。彼女に好きな人ができていたこと、それだけが違っていて、そのことが胸に大きな穴を開けた。フラれちゃったと気まずそうに言っていたけれど、その瞬間に俺も一回失恋を経験した。しかも告白もせずに、不完全燃焼で。
それでもその時はそのショックよりも谷地さんと出会えたというチャンスを逃してはいけないという気持ちの方が大きくて、つい食事になんて誘ってしまった。
フラれた同士で、なんてもっともらしい理由をつけて。全くの嘘ではない。けれど、俺の方は一度の失恋で諦めるつもりは毛頭なかった。
谷地さんは二年八か月の片想いだったと語ってくれたけど俺はその倍以上の時間を想っているのだ。たった一度フラれたくらいで諦められるなら高校卒業時にとっくに終わっていてもいいはずだ。だけど終われなかった。

「手料理、ですか……」

俺の言葉を復唱する谷地さんの表情はどことなく微妙なものだった。
それもそのはずだ。女性にとって、恋人でもなければ好意を寄せているわけでもない男の家にあがることは相当の覚悟と勇気が必要なことなのだ、というのを前にどこかで聞いたことがある。
言われてみれば確かにそうだと納得する。男からしてみれば自分のテリトリーに入った時点で全てを承知の上で来ているのだと、自分に好意を持っていると勘違いしても仕方のないこと。ましてや一人暮らしだったら尚更だ。全男子は狼だというわけでもないが世の中自制のきく輩ばかりではない。
それなのに谷地さんは一度自分の家に帰って諸々の準備をして再度俺の部屋にやってきた。加えて晩ご飯の用意までしてくれていた。
それはきっと迷惑をかけたからという謝罪の意味と何か詫びなくてはという義務感のようなものが原動力となったのかもしれない。それでもほんの少しの希望をそこに見出したかった。
もしかしたら……? なんて淡い期待を抱きたかった。
だからこの提案は一種の確認作業だ。ここで拒まれるようならほぼほぼ脈なしと捉えてしまってもいいだろうと。本当にそこには俺に対する好意はなくて、純粋に自分の失態に対する謝罪とお詫びの気持ちで作ってくれたんだろう――と。

「嫌?」

訊くのがとても怖かった。でもいつまでも訊かずに沈黙の時間を過ごすことはできない。テーブルの下で力強く拳を握る。でも谷地さんの回答は俺の悪い予感を打ち消す肯定的なものだった。

「い、いえ! 嫌ではないです。でも普段は自分が食べられればいいやと思って適当に作っているので赤葦さんのお好みに合うかどうか……」
「すごく美味しいよ。こんなちゃんとしたご飯、久しぶりに食べた」
「あ、ありがとうございます……」

先ほどの表情が自分の料理の腕に対するものだとわかり、心中で安堵のため息を漏らす。よかった……。

「谷地さんにも授業があるし用事だってあるだろうから無理にとは言わない。でも、いつも家に帰ったら部屋は真っ暗で一人で寂しく食べてたから昨日も今日もこうやって谷地さんとご飯を食べられてすごく楽しかったよ」
「それ、私もわかります。私も東京に出てきて、飲み会とか行くときもありますけど、基本的に家で一人でご飯食べてるのでなんだかちょっと寂しかったです。それに誰かに自分の作った料理を食べてもらって美味しいって言ってもらえるのって、恥ずかしいけどすごく嬉しいんだなって思って……。なので、その……赤葦さんさえよろしければ、これがお詫びになるかどうかは甚だ疑問も残るところではありますがまた夕飯を作りにお邪魔させていただきたく思います」
「十分すぎるし、あんまり昨日のことは気にしなくていいから」

だからもうこれでおしまい。
そうしめて、すっかり冷めてしまった晩ご飯を再開した。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -