ああ、そっか


谷地仁花です、と名乗る少女を見つめる山口の視線は同級生に向けるそれとは違っていた。
小学校からの付き合いだからいつもとほんの少し違っただけでもわかってしまう。ああそっか。そうなんだ。ふーん。
いつにも増して緩い笑み。薄紅に色付く頬。優しい眼差し。雰囲気もいつもに比べて春めいている。
こんな山口の横顔、初めて見た。

「わかり易過ぎデショ」

小さく呟いた言葉は誰の耳にも届かず静かに溶けていく。

「……まあ、わからなくもないケド」

例えて言うなら向日葵みたいな、太陽が似合いそうな笑み。それに加えて色素の薄いショートヘアと明るくて軽やかな、女の子らしさがある中にも少し臆するような声が可愛らしい印象を強めている。
周りの人間に身長があるからというのと、谷地さんの小柄な体躯とオドオドした態度が相俟って小動物っぽさを醸し出している。なんだろう、護ってあげたい――みたいな?
色々な要素を加味しての事なのか、単に一目見た時からなのかはわからない。だけどまあ、あんな山口の様子を見ては百人が百人同じことを言うだろう。
どう見ても――恋だったって。

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