第一回全力鬼ごっこ開催


「おはようございます」
「お、奥田さん、どうかしたの?」

腰を押さえながら登校してきた愛美にカエデは思わず声をかける。明らかに様子がおかしい。怪我でもしてしまったのだろうか。考えれば考えるほど嫌な想像が働いてしまう。しかしその想像も愛美の言葉であっけなく覆されることとなる。

「あ、えっと……昨日カルマ君と寝たら腰が痛くなってしまいまして」

笑い話にも洒落にもならないその一言で教室中がしん、と静まりかえる。話題の中心地にいる愛美だけがその状況を察せずに首を傾げている。どうしてみんな急に静かになってしまったのでしょう、とでも言いたげだ。

「えーっと……奥田さん、もう一回言ってもらえる?」

有希子が困惑気味に言葉を紡ぐ。愛美からの衝撃が上手く受け止められていないのか、いつもの優しい笑みはどことなく引き攣ったものになっていた。その笑みに愛美は若干の不穏の空気を感じ取る。だけどそれが何に起因するものなのかまではわからず未だに目をぱちくりとさせている。しかしここで口を噤んだままでも仕方がない。言われた通りに先ほどの言葉を復唱する。

「昨日カルマ君と寝たら腰が痛くなっちゃったんです」
「カルマ君と……寝た? それは言葉通りの意味で合ってるのかしら?」

有希子の笑みがどんどん黒い物になっていく。その気配を察してか、いつの間にか教室には愛美とカエデを残し誰もいなくなってしまった。カエデもその流れに乗って出ていきたかったが、最初に訊いてしまった縁もあり残ることを選択した。訊いてしまったからには最後まで、と。それに気付くこともなく、臆することもなく愛美はさらに言葉を続ける。

「言葉通りじゃない意味が――」

しかし愛美の言葉は最後まで紡がれることはなかった。新たな登場人物、もとい話題の中心人物であるカルマがタイミング悪く教室のドアを開けてしまったのだ。

「おはよう……あれ? 何かあっ……」

たんだね、と尻すぼみになる言葉を残してカルマは開けたドアを音もなく閉めた。と同時にカエデと有希子がアイコンタクトで合図を取り合い逃げたカルマを追う。
その図は逃げるウサギを狩る狼のようだった。外見だけで見るならばウサギは彼女ら二人で狼はカルマなのだろうが。

「茅野さん、絶対捕まえるわよ」

有希子の笑みにこれは絶対ミッションインポッシブルをしなければならないとカエデは腹を括った。



(対赤羽セコム結成)

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