君を直視できません


燦々と降り注ぐ太陽からの光が容赦なく肌を焼いていく。言葉にしたところでどうにもなるものではないが、これも気分の問題。オレは大きくため息を吐き出して呟く。

「あっちーな……」

恨みがましく空を見上げてみても何も変わらない。雲なんてどこにも見当たらない快晴が少々、というか、かなり参らせてくれる。
他の奴らはどうしてああも楽しげに海で遊べるのか不思議なもんだ。暑いってのに、元気なもんだよな。
大体なんでこんな真夏日に海になんて来たんだ。いや、まぁ海水浴をしたいと思うこと自体はわからないでもないが。
うだうだと、頭の中で言いたくても言えないあれやこれやを考えていると目の前に陰りができた。

「ユーリは泳がないんです?」

声と共に飛び込んできたのは白い水着。思わず後退りをしてしまう。

「エ、エステル!近い!」
「何がです?」
「あぁ、もういいから!ちょっと離れろ」

つっけんどんに押し返して漸く落ち着く。
そりゃ目の前に水着を着た女の子(しかもエステルだし)がいたら話すもんも話せない。あんたには危機感とかねえのかとか言ってやりたい気分だ。
当の本人はそんなの知らぬ存ぜぬって感じだしな…。困ったもんだ。

「で、なんだって?」
「あ、はい。ユーリは泳がないんです?ずっと日陰で座りっぱなしというのも、勿体無いですよ!せっかく海水浴に来たんですから」
「いや、オレはここで見てるよ。第一水着だって着てないだろ?」
「今から着替えればいいんじゃないです?」
「エステルはどうしてそこまで頑なにオレを海に入れさせたがるんだよ」
「どうしてって…いつもユーリは皆に代わってまわりに気を張っていて楽しもうとしてません。今日くらいは、羽を伸ばしてもいいじゃないですか」

じっと、強いまなざしが向けられる。
こうなってしまうと逆らえないのはわかってるし、仕方なしにため息をひとつ。
わかったよ、わかったって。

「…ユーリ?」
「わかったよ、着替えてくる」
「本当です?」
「嘘ついてどうすんだよ」

苦笑してゆっくりと立ち上がる。
まあ、今日くらいはいいか。一歩、日陰から太陽の下へと踏み出す。
一気に増す熱気にくらりとしたけれど、頭を振ってごまかす。

「あっちーな……」
「ふふ、そうですね」

先ほどと同じ独り言のはずなのに、いつの間にか隣にいた彼女が返事をしてくれて。それがなんだか嬉しくて、小さく笑みを漏らした。





(おーい、青年いつまでイチャついてんの?)



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遅れましたが、もみちゃんお誕生日おめでとう!!
これからも仲良くしていただけたら嬉しいです\(^o^)/

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