向日葵の花言葉


「ミッシェルさん」
「なんだ、アドルフ」
「オレ、今朝からやたらと班員から花を貰うんですけど今日って何かの記念日とかでしたっけ?」

休憩室で書類の整理をしている最中のこと。問いかけられて首をかしげる私に、向かいに座るアドルフも心底不思議そうな顔をして、手に持っていた花をテーブルに並べていく。
赤色や白色、黄色など色とりどりで種類も皆違っていて統一性がない。
ああ、そういうことか。一目見てそれが班員からアドルフに対してのプレゼントであることを知る。
一見バラバラで統一性のないそれらも、アドルフの班員からの贈り物という点と“今日”という点が合わさればちゃんと意味のあるものになる。
もしかして、アドルフ自身は気付いていないのか、それとも単に忘れているだけなのか、どちらにしても貰った花の意味を知りたそうにしているから教えたほうがいいのかもしれない。

「アドルフ。今日って何月何日だ?」
「12月25日です」
「わからないか?」
「何がですか?」

この反応を見る限り、本当に気付いていないのだろう。
最近は仕事に忙殺されているとはいえ、鈍すぎる。
内心ため息を吐き出して、花からアドルフへと視線を上げたまさにその時だった。

「あ! 班長! 漸く見つけました」

にこやかな笑みを浮かべて、エヴァが入室する。
その手にはやはり花。花のことをよく知らない私でもあれはわかる。向日葵だ。真冬に向日葵を売っている花屋なんて無いだろうに、一体どこで手に入れたのやら。

「私で最後です。どうぞ」
「ああ、ありがとう」

訳がわからないながらも礼儀正しく礼をするアドルフ。
その姿を見て、微笑ましく思う。

「班長、ちょっとこの花借りますね」

言うが早いか、エヴァはアドルフの目の前に広げられた花を全て手に取り、そこに自分が持ってきた向日葵を加えて茎の下の方を赤いリボンで結び束ねる。
誰が見てもわかる、簡易花束の出来上がりだ。
手の中にあるそれを、持ってきた花のような笑みで、エヴァはアドルフへと差し出す。

「班長。お誕生日おめでとうございます!」
「は? 誕生日?」
「そうですよ! 今日は班長のお誕生日じゃないですか」
「そう、だったか……?」

自分の誕生日すら忘れている上司に、エヴァは続ける。

「第5班全員からプレゼントです」

受け取ってください、と添えれば若干戸惑いながらもアドルフは小さな花束を受け取る。
ここで漸く、自分が貰った花の意味がわかったのか、アドルフは「ああ、そうだったのか……」と呟く。
気付くのが遅いってんだよ。

「ありがとう……」
「どういたしまして」

小さな礼の言葉をしっかりと受け取ったエヴァは再び花のような笑みを浮かべた。



(Glücklicher Geburtstag Adolf!!)

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