変わらないイニシャル


久しぶりに机の整理をしたら、小学生の時に流行ったイニシャルストラップが出てきた。
懐かしいと思い、手に取って顔の前に持ち上げる。アルファベットのKとSがゆらゆらと揺れている、いかにも小学生向けの簡素な素材でできたそれをじっと見つめる。
あの頃はこれが所謂トレンドで、つけているだけで人気者みたいな風潮があったけれど、今見るとそんなに流行る類のグッズではないと思うのは私だけなのだろうか。
まあ、小学生なんてただの鉛筆にさえ価値を見出してトレンドにしてしまうのだから、こんな誰が見てもお子様向けのグッズも小学生にかかれば一大ブームを巻き起こすこともなんということではないのかもしれない。
ふと、時計を見ればもう23時を回ったところだった。

「明日……朝練」

確認のように呟いて、部屋の電気を消す。
布団に入ってすぐ、私は意識を手放した。



「あれ、清水なにそれ」
「え?」

言われて初めて気付いたけれど、私の鞄のポケットに昨日見つけたストラップがいつの間にか入っていた。
もしかして昨日無意識のうちに入れてしまっていた?

「うわー懐かしい! これ小学生の時に流行ったやつだべ!?」
「あ、うん。そう」
「俺も持ってたなー! 小学生の時ってこういうのすごい流行ったべ」
「そうだね」

ポケットからストラップを取り出して、昨日と同じように顔の前で揺らす。
相変わらずお子様向けな商品だ、と思う。

「でもこのイニシャルストラップって苗字が変わっちゃうとつけられないよね」

別に何かを意図して言ったわけじゃない。
ただ、ふとそんなことを思ったことをそのまま口に出しただけ。
だけど菅原は一瞬きょとんとして、そしてにかりと白い歯を見せて笑う。

「ああ、確かに! でも清水は俺と結婚すればそのまま使えるべ」
「え?」
「菅原と清水。両方とも頭文字はSだから」
「そう、だね……」

一瞬何を言われたのかわからなかった。
段々と言葉の意味を咀嚼して、漸くわかったころには菅原はそそくさとどこかへ行ってしまっていたし、私の頬はこれでもかと赤く染まっていた。



(平然とそんなこと言わないで)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -