送信ボタンが遠い


※なんちゃって学パロと見せかけて白龍くんがメール一通送るのに奮闘する話









先ほどから一行打っては消して、一行打っては消してを繰り返しているせいで一向に文面が完成しない。
苛立ちを感じながらも、また一文を消す。
今日、念願叶ってモルジアナ殿からメールアドレスを教えてもらったというのに。そこから2時間が経過しているのに、肝心の俺ときたら未だに一通のメールも送れていない。
簡単なことじゃないかと思う。
『こんにちは、練白龍です。登録お願いします』
この短い文章でいいじゃないかと。だけど、欲をかいてしまう。
これを機にもっとモルジアナ殿と仲良くなりたいと。
さりげなく彼女の趣味や嗜好を聞いてみたいし、休日は何をしているのか知りたい。俺の知らないあなたのことをもっと知ってみたい。
だけど、それは踏み込んだ質問であるということも重々理解している。
だから文面が進まないのだ。
打っては消して、打っては消して。
こんなことを聞いてしまって引かれないだろうか。失礼にあたらないだろうか。
そんなことばかり考えているせいで、結局最初に打った無機質な文面に戻ってきてしまう。
――もういいか、これで。
半分諦めの入った決断。
だけどこの文面ならば無難だし、最初から超長文を送ってモルジアナ殿に引かれてしまっても嫌だ。
考えてみれば、メールアドレスを聞くのにも何週間とかかった俺なのだ。
今更焦って彼女との仲を深めなくてもよいではないか。そうだ。ゆっくり時間をかけて仲良くなりたい。
意を決して携帯の送信ボタンを押しこむ。
数秒してから画面には“送信しました”の文字。
大きく息を吐き出してフリップを閉じる。
これで漸く一仕事終えた。ベッドに携帯と自分の体を放り出して深呼吸。
緊張の糸が切れたのか、急に重たくなる瞼。
たぶんモルジアナ殿からの返信は時間がかかるだろうし――赤外線通信をするのでさえ戸惑っていたほどだから――少しばかり寝てしまうのもいいかもしれない。
幸い、今日は母上がいるから夕飯の支度をしないで済むし、ここ最近はモルジアナ殿からメールアドレスをどうやって訊いたらいいかそればかりを考えていたためろくに寝ていない。
小さく欠伸をした後、俺の意識はぷつりと切れた。



(え……っと、返信ってこのボタンでよかったのかしら?)

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