心なんてないはずなのに


アクセ♂咎♀設定。





吹っ飛ばされた――と理解するころにはもうわたしは死の淵を彷徨っていた。
ああ、どんどん視界が暗くなる。体が冷たくなっていく。痛みもどんどんなくなっていく。
待って。まだわたしにはやるべきことがあるのに。
想いとは裏腹に体はその機能を失くしていく。
遂には瞼すらも重くなり、目を開けていることが怠くなる。
このまま意識を手放してしまえたらどんなに楽だろうか。
白く靄がかった頭の中で木霊する声。
やるべき…………こと。
完全に瞼が落ちた――その瞬間だった。
体に活力が戻る。
蘇生されたのだと気付く。
未だはっきりしない視界の中で彼は言った。

「蘇生しました。もう無理はしないでください。」

そうプログラミングされているから言葉を紡いだだけなのはわかってはいる。いるのに、その言葉が――わたしを気遣って、思いやってのものだと勝手に勘違いしてしまいそうになる。
相手はアクセサリ。わたしたちとは根本的に違う存在。造られた存在。
機械だってわかっているはずなのに。
この感情は――何?

「ありがとうございます」

もう一度剣を握り直す。
深呼吸して視線を排除対象へ向ける。

「行きます」
「了解しました。」

大きく一歩を踏み出して駆けた。



(あなたが後ろにいるだけでこんなにも頼もしいと感じるだなんて)

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