「本気にしちゃうだろ?」
「清水ってさ、モテるよな」
唐突に始まった会話。
モテる? 何故?
机を挟んで向かいに座る菅原を見て首を傾げる。
「どうして?」
「え、どうしてって……周りの目を見ればわかるべ?」
周りの目?
そんなのあまり意識したことがないし、気にしたこともない。
特別自分の容姿がいいと思ったことはないし、私以上に可愛い子なんて星の数ほどいると思う。
そのことを伝えると、今度は向こうが首を傾げる番となった。
「清水は自分の容姿に無頓着すぎるべ」
「身だしなみはきちんとしてるから大丈夫」
「いや、そうじゃなくて」
何がそうじゃなくてなのだろう。
言いたいことの意図がわからない。
「清水はすげえ可愛いし美人だと思う。これは俺だけじゃなくて皆思ってることだべ。だから、その……」
言いよどむ菅原。
言葉を繋げようにも、それが言い辛いことだからなのか、なかなか音としてそれが現れていないように思える。
暫くして、漸く紡がれた言葉に私は目を見開くことになる。
「だから、あんまり気を持たせるようなことはしないでほしい……べ。本気にしちゃうだろ?」
頬を染めて視線を逸らす。その仕草が私の心をこれでもかとかき乱す。
見ているこちらまで徐々に頬が染まるのがわかる。
菅原は私が気を持たせるようなことをしていると、そう言うけれど。菅原も大概だ。そんな表情で、そんなことを言われたら私の方こそ本気にしてしまいそうになる。
結局、二人してあっちこっち視線を巡らせることになっている間に昼休みが終わってしまった。
(何してんだ、お前ら)