「いつもありがとう」


大学生スガさん×社会人潔子さんで付き合ってる設定。
ご了承の方のみスクロールプリーズ。














最寄駅を出てすぐ――歩いて1分もかからないところにある商店街。そこの一角にある少し大きなショッピングセンター。
大学帰りにそこに寄るのが俺の日課になっていた。
夕飯の買い出しに行くのではない。実家暮らしの恩恵に与っている身の上だから、頼まれたものは買いに行く気はあるけれど。
だけど今日は特に何かを買って来いと言われているわけではない。
違う目的があって、俺の足は目的地へと向かっている。
ガラス戸が左右に開き、途端にやってくる冷気が心地よく汗ばんだ体を癒してくれる。
外との気温差に若干の身震いを感じながら、真っ直ぐに目的の場所を目指す。
まだ昼の3時を回ったばかりで時間が早いからか、店内にはちらほらとしかお客の姿を見かけない。

「え……と、どっちだべ」

毎日来ているはずなのにいまだに目的の場所がどこにあるのか把握しきれていない。そんなめちゃくちゃ広いところでもないはずなのに。
とりあえず記憶を遡ってみて、入り口で止めていた歩みを再開させる。
――と、聞き覚えのある声に顔を上げる。
そこにいたのは浴衣姿の清水。
七夕が近いからか、それとも夏だからかはわからないけれど、清水の勤める店の制服が浴衣になっていた。
驚き半分で見つめていると、眉根を寄せた彼女と目が合った。

「いらっしゃいませ……菅原」
「いらっしゃいました、清水」

俺の返答に苦笑い。
いつも彼女は俺が来るとこうして微妙な表情をする。
そんなに働いている姿を見られたくないのだろうか。普段の制服姿も、その浴衣姿もとても似合っていると思うのに。

「今日は早いね」
「5限が休講だったからな」
「じゃあ今日は……」
「終わるまで待ってる。今日は早番だべ?」
「……そう、だけど」
「あと3時間くらいだべ? どっかそのへんぶらぶらしてるから終わったらメール入れて」
「……わかった」

何か言いたげな顔だけれど……どうしよう。
これは追及したほうがいいのだろうか。
でもあんまりぐいぐい訊いてしまって引かれてしまうのは嫌だ。
悶々と考えをめぐらせている内に彼女の方が口を開く。

「菅原」
「なんだべ?」
「いつもありがとう」

思いも寄らない言葉に一瞬呆ける。

「菅原が一緒に帰ってくれるから夜道もそんなに怖くない」
「そ、そりゃあ……俺は清水の彼氏なんだから当然だべ」
「ふふ、そうだね」

とどめの笑顔をもらって一旦別れる。
ショッピングセンターを出て、大きく深呼吸して、その場に蹲る。

「あの笑顔は……反則だべ」

――ああ、早く3時間経たないかな。


(清水さん顔赤いけど、熱でもあるの?)

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