6月12日


「さあ、阿良々木くん。今日は恋人の日と呼ばれるらしいから恋人ごっこをしましょう」
「恋人ごっこ!? おい待て戦場ヶ原! 僕とお前は恋人同士だろ!?」
「はっ、何を言っているのこの愚民が。勘違いしないでよね」

勘違いしないでよね、が本当の意味で勘違いしないでよねに聞こえるし、戦場ヶ原の目は真面目に訴えてきてるし僕のライフはどんどん減っていっているしでもう帰りたい気分だった。
舞台は直江津高校の教室。時刻は放課後。
メールで待機命令をされたから、何かあるのかと不安半分嬉しさ半分で待っていたらこの仕打ちとは……。
こんなことなら帰ればよかった――と思ったところで帰ったら帰ったで後が怖そうなのでどっちみち僕には選択肢なんてなかったのか。

「さあ、阿良々木くん。ああ失礼噛んでしまったわ、ごみらぎくん。恋人ごっこを始めましょう」
「もう泣いていいですか」
「泣くのなら 殺してしまえ 阿良々木くん」
「追い打ちかけないでください戦場ヶ原さん」

どこの世界に彼女にこんなぼろくそに言われる彼氏がいるんだ……。
項垂れている僕に差し伸べられる手。

「冗談よ。阿良々木くん、帰りましょう。今日は手を繋ぐことを許してあげるわ」

ゆっくりと顔を上げれば、少し困ったような、照れているような、複雑な顔をした戦場ヶ原と目が合った。
その顔だけで、ライフ全回復。
おずおずと、伸ばされた手を取ると優しく指を絡めてくれる。

「阿良々木くん。好きよ」
「僕もだ、戦場ヶ原」

小さく笑うと、それにつられて彼女も笑ってくれる。
それが嬉しくて、また笑う。
その繰り返しで、今日も終わる。



(今日も、明日も、その先も――あなたの隣にいることが幸せです)


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6月12日が恋人の日というのを聞いて突発的に書いたひたらぎ

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