::ゾロ+ル→サン



むくり。
顔が熱い。

「・・・・・・。」

さっきまで日陰だったはずの船尾がギラギラに照らされていた。
・・・暑いはずだ。こっちが日向ならあっちは日陰だろう。おれは起き抜けでぼんやりした頭で船首に向かってあくびをしながら歩いた。

「おーい、ルフィ!洗濯ものかごこっちまで持ってきてくれ。」
「おー!」

誰かがパタパタと歩いてると思ったらコックとルフィだったようだ。コックが洗濯ものの入った大きなかごを持って、持ちきれないもう一つの同じかごをルフィが持ってコックのあとについていた。
「よし、あんがとよ。」
「お安いご用だ!」
コックが礼を言いつつルフィの麦わらにぽんぽんと手を置いた。そしてその手をルフィががっしと掴み嬉しそうに満面の笑みで笑う。
「・・・・・・。」
ルフィのやつ。いつもコックに引っ付いて蹴り倒されてるくせに案外仲がいい。



翌日。

「おい、コック。洗濯もの。」
洗濯ものかごから服を取り出そうとしているコックに声をかけた。果たして振り向いたコックは予想外なほどチンピラな表情で驚いた。
「ああ?今やっと干すところなのが分かんねえのか。」
これは言葉が足らなかったか。
「いや、洗濯ものの追加はねえ。干すのを手伝ってやるって言ったんだ。」
コックはもともとでかい目を更に見開いて無言だ。
・・・なにか言いやがれ。
「そりゃ、・・・ありがとよ。」
なんだか動きがぎこちない気がしたが、洗濯ものかごを足でちょいっとこっちに向けてそう言ったということは手伝ってもいいということか。
「ちゃんと皺を伸ばせよ。」
しわ・・・とコックに目をやれば慣れた手つきでおれのシャツを干していた。
これは・・・奥さんみてえだな。と思ったが思っただけなのでコックからの蹴りはない。(言ってもコックはなんのことやら分からないだろうとも思う)
ぴっ、ぴっ、という小気味いい音と共にシャツの皺が伸ばされそのまま洗濯紐に吊るされた。なるほど・・・。

おれもコックを見習って洗濯かごからシャツを一枚取る。
コックがやっていたように上の襟と下の裾を手で固定し小気味いい音、

びっ。

さらさらの金髪を揺らしながらくるりとコックが振り向いた。

「びっ?」

新種の動物の鳴き声のようだった。
しかしコックの目は俺には向いていない。

コックの目線は、青に黒のストライプが入った、細身のシャツ、に、

強く引っ張りすぎた。全く力加減云々を考えていなかった。

「おれのシャツ・・・・・・!!」

こ、コックのシャツだと・・・。
悲痛な面持ちで叫んだコックに冷や汗がだらだらだ。
「す、すまねえ・・・。」

というか、おれは何をやってんだ・・・わざわざ慣れねえ洗濯でコックの役に立とうとしたのがいけなかったのか。ただ礼を言われたかっただけなんだ。あわよくば頭を撫でてもらえねえかなと思ったくれえで。

そのとき、容赦なく横に裂いて思わぬボーダーを入れてしまったシャツを握りしめて黙り込むおれの背中をコックが叩いた。
「まあ、・・・それ、もうかなり着てたやつだし、うん。」
のろのろとコックに顔を向けると、さっきの悲痛な面持ちはそこにはなかった。なんだか困ったような、仕方ねえなって顔だった。
「手伝ってくれてありがとな。でもよー、人には向き不向きがあるんだよなー。」
おれの手からシャツを取り、これは布巾になるな、と破れたままのシャツを干すとにっかと笑った。

・・・・・菩薩か?

「お前にできそうなことでさ、なんかあったら言うから、そんでお前の手があいてたら、そしたら手伝ってくれねえか?」
こくこく。頷くしかねえ。
おれが頷いたのを見るとコックもよし、とうなずいてまた洗濯ものを干し始めた。
「さんきゅーな。ま、お前は鍛練でもしてろって。」
「・・・・・・おう。」

おれはまた頷いてその場を離れた。
顔が赤くねえか心配だ。いや絶対赤い。あんな菩薩のようなコックは初めてだ。いや、チョッパーなんかが相手だとわりとあんな感じか。

・・・コックからのお手伝い要請はいつ来るんだ?しばらく落ち着けねえな・・・。



「サンジー何やってんだ?」
「んー?こりゃシャツを布巾にするからはじっこ縫ってんだよ。」
「なんで破れたんだ?」
「マリモが慣れねえことして破いたのさ、びりっとな。」
夕食後のキッチンで裁縫に勤しむサンジを見つけたルフィはまとわりつきながらシャツだった布を触っていた。
「手伝うとか謝るとか、どこから学んできたんだろうな?あいつ。しかもシャツ破ったあとすんげー落ち込んでんだよ。なんか途中からチョッパーに言い聞かせるみてえになってたし、俺。」
実はそのやり取りを船首で寝ながら見ていたルフィだが、サンジから改めてことのあらましを聞くと無邪気な笑い声をあげた。
(ししし、あほだなーゾロ。サンジに言われたときに言われたことやりゃーいいのに!)
「どした?」
「なんでもねえ! うひょーサンジ縫うのうめえなー。」
「へへ、まあな。」
ルフィの純粋な称賛の言葉にサンジも口元をゆるめる。
「こんなもんか。・・・あ、ルフィ、」
「なんだ?」
「上に干した洗濯もの取り込むの手伝ってくれねえか?」
「ししし。任せろ!」





end.

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