::ロビサン 「あら、わたし寝てたのね・・・。」 ロビンは、スタンドのライトで照らされた書物を見て、調べものが終わったとき急に眠気がやって来たことを思い出した。 時計を見ると、時刻は午前5時。調べものが終わったのは4時前。一時間ほど机に突っ伏して寝ていたようだ。 もう一度寝直そうかしら、とゆっくりまばたきをしたところで微かな物音が。 ―――そういえば、早起きなコックさんはもう起きる時間ね。 ロビンは柔らかな笑みを浮かべると、優雅な足取りでキッチンへと足を運んだ。 キッチンに足を踏み入れると、真っ先に控えめな声音が耳に入ってきた。 「―――ロビンちゃん。ごめん、起こしちゃった?」 「いいえ、今日は調べものをしていて・・・いま終わってちょっとうたたねしてたところなのよ。」 そうと決まったわけではないのに、本当にすまなそうにしゅんとして謝るサンジにロビンは目尻を下げ、誤解を解くように優しく話しかけた。 「そっかーよかった・・・。ちょっとね、上の棚のボウル取ろうとして落っことしちゃったんだ。」 「あら、大丈夫なの?」 「うん大丈夫だよ〜、へへ。」 照れ笑いを浮かべるサンジにロビンもつられて笑った。 「ふふ、今度そういうことがあったら言って?取ってあげるから。」 「ロビンちゃん優しいなあ〜。でも男サンジ、心配はご無用ですよ!」 ありがとうございますう〜とふにゃふにゃした笑顔を振り撒いたサンジが、あ、と声を上げた。 「遅くまで調べものお疲れさま!なにかいるかい?」 「ありがとう。そうね、サンジの手が空いていればお願いしようかしら。」 「ぼくの手はロビンちゃんのような素敵なレディのためにいつでも空いてるよおー!お任せあれ!」 くるくると回りながら笑顔を浮かべているサンジは、ロビンのために料理をするのが本当に楽しそうだ。 これから寝るんだよね?じゃあコーヒーじゃなくてミルクがいいね。それに今日のおやつをアレンジした焼き菓子を二切れ。ミルクにちょっとつけて食べるとおいしいよ。ミルクにはシナモンを少しだけいれたから。いい匂いするでしょ?寝付きがよくなるんだよー。 さあ、召し上がれ、 と言って出されたミルクと焼き菓子に思わずロビンは微笑む。見た目にもおいしいそれは深夜で疲れていた心身を労るような優しいコックの味がした。 焼き菓子を食べ終えてミルクを味わっていたロビンが、朝食の下ごしらえに野菜の下茹でをするサンジに声をかけた。 「サンジ。」 「うん?」 「朝食ができたら起こしてくれるかしら。」 「お安いご用だ、けど、寝てないならしばらく経ってから朝食用意するよ・・・?」 「大丈夫よ。サンジの料理、早く食べたいもの。」 ロビンがそう告げたときのサンジは、その日顔を合わせてから一番の花が咲くような笑顔だった。 自室に戻ったロビンは、少し前のサンジの蕩けるような笑顔を思い出してくすくすと目尻をほころばせた。 ―――コックさんは、どんなふうに起こしてくれるのかしら? よく寝られそう、と目を閉じたロビンもまた、今日一番の笑みを浮かべていたのだった。 end. |