それは一生の秘密事 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「アンタ、初璃のこと好きだったでしょ」 「な……」 その科白に俺は言葉に詰まって、藤原を見下ろすしかできなかった。 狼狽えることも、否定することも出来ずに。 藤原はただただ静かに俺を見つめて「あ」とポツリとこぼす。 「違うわね。今も好きでしょ?」 「……何で、イキナリ」 あんまりに唐突で予想外な所からされた指摘に、俺は不覚にも何の反応もできなかった。否定できなかったんだ。――それはつまり、肯定したのと似たようなもんで。 みるみるうちに顔が赤くなってくのが、自分でも分かった。ヤバイぞ。こんなん、あの二人に見られたら――。 ただいま幸せ絶頂であろう友人二人の姿を思い浮かべて、何とか平静を取り戻すべく俺は深呼吸を繰り返した。その間に感じた違和感に俺は首を捻りつつ、藤原をちらりと見た。 彼女はただ黙って、俺を見上げている。そこに冷やかしの感情は見受けられない。だから俺はぼそぼそと、もう一度訊き返すしかできなかった。 「……何で、そんなこと」 「なんとなく」 至極真面目くさった表情で、彼女は淡々と答えた。俺は僅かに顔をしかめる。 「そんなに分かりやすかったか?」 だとしたら問題だ。俺には隠せてる自信があったんだ。それを藤原に見抜かれてるってことは、あの二人だって。 ――瀬戸とタカだって、何か感付いているかもしれない。 二人が自分たちのことで手一杯だった状況からしたら、可能性は低い。そのうえ、泣けてくるほど鈍いヤツらなんだ。だから大丈夫だと思うんだけど。 俺がそう言うと、藤原はふるふると首を振る。 「他は知らないと思うわよ。わたしも、最初は確信なかったし」 「じゃ、何で確信したの」 俺はその場にしゃがみこみ、彼女を下から見上げた。半ば睨み付けてる感じかもしれない。だけど藤原は少しも動じず、俺を見下ろした。 何ひとつ揺らがない、真っ直ぐな視線。 やっぱり、苦手だ。 俺は目を伏せることで、今度こそ上手くその視線から逃れた。そこに藤原の声が静かに響く。 |