連鎖する僕ら 10 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「瀬戸」 自分でも驚くくらい穏やかな声で、俺はその名を呼んだ。それから彼女に向けて、手を差し出す。 瀬戸はきょとんと瞬いてから俺の手を見つめ―― 一瞬の後に破顏した。これ以上ないってくらい甘ったるい、最高の笑顔で。 「これからもよろしくな」 「こちらこそ!」 告げた言葉に、すぐに照れたような声が返ってきた。瀬戸は笑みを絶やすことなく、そのまま俺の手に自分の手を重ねる。 すっかり馴染んだその感触に、これ以上ないくらいの幸せを感じて――俺もまた口元を緩めた。 手を繋いで、歩き出す。 『ずっと一緒に』を誓うには、まだ幼くて不器用な想いを胸に抱いて。 これから歩く道のりはまだまだ長くて。望んだ未来を手にするには、越えるべき山が沢山あるのだろうけど。 それでも、いつかたどり着きたいと心から願ってる。 隣を歩くキミの笑顔も涙も全部、取りこぼさないで守れるくらい、強くなって。 一緒に並んで歩いて行ける、そんな未来に――。 『連鎖する僕ら』終 |