さくら、ひらひら 5 しおりを挟むしおりから読む目次へ 言葉以上に雄弁なその態度があるから、わたしは曽根に想われてるんだって自信を持てる。寂しくて、不安になるときもあるけど、でも頑張ろうって思える。 (曽根は分かってないだろうなあ……) そんな小さなことでも喜べてしまう、わたしがいること。だから、あんまり気に病まないでほしい。 野球を頑張ってる曽根のことだって、わたしは好きなんだから。 自分で考えたことに急に恥ずかしくなって、わたしは頬に手を当てた。ちょっと熱いような気がするのは、気のせいじゃない。 ぱたぱたと片手で風を送りながら、行き交う人々に目を移した。すると後ろから、訝しげにかけられる声。 「――瀬戸?」 「あっ、曽根! 早かったね」 呼び声にくるりと振り向けば、そこにはぱちくりと両目を瞬く曽根の姿。彼は暫くそうやって立っていて、それからまじまじとわたしの顔を見た。 「な、何っ?」 ある程度のリアクションは期待してたけど、そんなに見られると居心地が悪い。ちょっとばかり後退りしてしまったわたしの問いに、曽根は「いや……」と呟きながら口元を手で覆った。 「髪、どうしたの」 「時間があったから巻いてみたんだけど……」 「へえ」 おずおずとしたわたしの返答に、曽根は妙に感心したような声を返してきた。頷きながら、また改めて口を開く。 「結構、雰囲気変わるんだな。後ろ姿だと一瞬誰か、分かんなかった」 「……変?」 敢えて上目遣いで訊(き)いてみた。すると、曽根の視線がほんの少し揺れる。 「やー……」 口元にあった手が、ゆっくりと首の後ろに移動した。いつもより更にぶっきらぼうに、曽根の口から言葉が零れる。 「似合ってんじゃねーの」 そう言った彼の目元が赤かったのは、気のせいなんかじゃないはずだ。 だから、わたしは盛大に頬を弛めて告げた。 「ありがとう」 「おー」 曽根はぽりぽりと頭を掻いている。その姿を見つめていたら、どこか違和感を覚えた。わたしは首を傾げて、思いついたままを問う。 「曽根、制服じゃないんだね。荷物もないし」 今日も夕方まで練習だと聞いていたから、てっきり学校から直行してきたんだと思ってたんだけど。目の前の曽根の格好は長袖のTシャツにジーンズという、いたってシンプルで身軽なものだった。 怪訝に見つめるわたしの視線を受けて、曽根はひょいと肩を竦めてみせた。 |