さくら、ひらひら 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「お母さん、ずっと心配しててくれたの。そしたらね、わたし少しずつ元気になったから、何があったんだろうって思ったらしいのね」 はにかむように両目を細めて、彼女は続ける。 「そんなときに曽根と会ったんだって。だから、すぐに分かったらしいよ」 ――曽根が、わたしを元気にしてくれた人なんだって。 その言葉に、俺は軽く目を瞠った。ゆっくりと瀬戸の言葉の意味が脳内に浸透していって――胸の辺りが熱を持つ。 (うわ、何か) スッゲー嬉しいこと、言われたような気ぃすんだけど。 「だから、曽根ってばウチじゃ結構信用あるんだよ……って」 どうしたの? と怪訝そうに問う瀬戸に、俺は口元を手で隠しながら応じた。 「何でもないって」 そしてそれ以上の追及を逃れるため、わざと乱暴に瀬戸の頭を撫でる。 「ちょっ、やだ! お団子崩れちゃうでしょっ」 「いいじゃん、直せば」 「何その俺様発言っ!」 「や、俺様だし」 「もうっ!」 必死に頭を死守しようとする彼女を眺めつつ、俺は口元をゆるめる。 そして、思った。 (参ったな) 本当に。 こんなに俺を幸せにしてくれる、この存在を。 どうしたら、もっと喜ばせてやれるんだろうか。 どうしたら、もっと上手く込み上げてくるこの気持ちを伝えられるんだろうか。 その方法に、俺はまだ気がつかないでいた――。 【続】 |