さくら、ひらひら 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ それから、俺たちは他愛ない話をしながら外に向かった。別に付き合ってるのは周知の事実だから、教室で食ったっていいんだけど。まあ、邪魔も入りやすいわけで。主に、哲とか哲とか哲とか。部活中にネタにされるのは御免だ。それに今日も天気がいい。なので、俺らは連れ立って外に出てきた。校舎の外側にある非常階段に陣取って、それぞれ弁当を広げる。 「いただきます」 行儀よく両手を合わせてから、瀬戸がちょこんと頭を下げた。膝の上には、俺のものより二回りは小さい弁当箱がのっかっている。 「小せえよなあ……」 思わず口に出して言うと、瀬戸は自分の弁当箱を見つめながら首を傾げた。 「そうかな。フツーじゃない?」 「やー、小さいって。足りんの?」 「まあ、それなりに」 瀬戸はそう言うと、卵焼きを口にした。途端に目尻が下がるあたり、ホント素直なヤツだと思う。その様子を横目で見ながら、俺も箸を動かした。 「……お前の身体のサイズには、ちょうどいいのか」 「曽根はいっぱい食べるよね」 「まあな」 瀬戸の言葉に、俺は頷いた。現役の運動部員だし、何より俺は男だ。瀬戸と比べること自体、間違っている。 「太んない?」 「誰に向かって言ってんの」 やたら不思議そうな表情で訊ねてくる瀬戸に、俺は苦笑を返した。 「そのぶん動いてんだろ? つーか、もう少し肉欲しいくらいだし」 「げえ」 俺の発言に、イヤそうに眉をひそめる瀬戸。唇を尖らして、恨めしげにこちらを見上げてくる。 「嫌みですか、それは」 「何でそうなンだよ。……これはこれで、悩みなんだかんな」 体質なんだろうけど、俺はガキの頃から食ってもあまり太れない。しっかり筋肉つけて身体を作りたい身としては、なかなか深刻な悩みだったりする。 「食って、動いて……それなりの筋肉つけんのに、色々気ィつかってんだぞ」 「うー。でも、太んないのは羨ましい」 「そんなに気にしてんなら、運動すりゃいいじゃん」 心底羨ましげに言う瀬戸に、俺は呆れつつ言った。俺の言葉に、彼女は箸を持つ手を止めて考え込む。 (ンなに悩むことかねェ) 首を捻りつつ、とりあえず様子を見ることにして、俺は食事を再開した。すると瀬戸がガバッとこちらを振り仰ぎ、箸を握りしめて口を開いた。 |