さくら、ひらひら 3
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『明日さ、昼一緒に食わねえ?』

「……は」

 たっぷり間を取って、その一文字を言うのが精一杯。あれ今このヒト、何て言ったの? 何かあまり聞き慣れないことを言われたような気がするんですけど。

『ダメならいいけど……って瀬戸、聞いてっか?』

「はい! 聞いてます聞いてます!」

 黙りこんだわたしに、怪訝そうに問う曽根。思わず姿勢を正して、わたしは答えた。

「大丈夫! 一緒に食べるっ!」

『お、おう』

 妙に意気込んで返したわたしの答えに、気圧されたような曽根。だけど彼はすぐに気を取り直して、いつも通り低い淡々とした声で言った。

『んじゃ、まぁ……そういうことで』

「あ、うん」

『――おやすみ』

「おやすみなさい」

 そして、通話が終了した。

 ケータイを握りしめたまま、考える。

(何で?)

 何で、いきなり誘ってくれたんだろ? 今まで、そんなふうに言ってくれたことなかったのに。

 もしかして――。

「同じこと、考えてくれたのかな」

 一緒にいられなくて、寂しいって。

「……うわあ」

 ふと舞い降りた思いつきに顔を両手で覆った。頬が弛むのを抑えられない。そのまま布団にゴロゴロと転がって、こみあげてくるものを何とか堪える。

「ゲンキンに出来てるなあ……」

 呟いて、枕に顔を埋めた。

 こんな些細なことで幸せになれちゃうなんて。

 そうしてわたしはその後しばらく、一人ニマニマと締まりなく笑い続けたのだった。



  【続】

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