さくら、ひらひら 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「すっごいシワなんだけど」 「あー。……そうか?」 確かに気分は滅入ってたけど、そこまで不機嫌そうな表情をしてるのか。俺は何となく気まずい思いで、自分の眉間を揉みほぐした。 そんな俺を見て、藤原が肩を竦めて哲に問う。 「あんた、また何かやったの?」 「まだ何もしてないって。つーか、何でタカの機嫌が悪いとすぐ俺のせいになんのっ?」 「日頃の行いでしょ、そんなの」 「冴香さんがひーどーいーっ!」 にべもない藤原の言葉に、哲が喚いた。その大声に見学に来てる新入生たちが、ぎょっとしてこっちを見る。 『やかましい』 まったく同じことを思ったらしい藤原と俺は同時にそうハモると、同じようなカオで哲を睨みつけた。 哲が不満げに口元を歪める。 「何で俺だけ、悪者なのさー」 「それこそ、日頃の行いだろ」 ぶちぶちと文句を言うヤツを冷たく一瞥してから、俺は藤原に問いかける。 「何、用事って」 目が合ってから、藤原は一瞬黙り込んだ。そして周囲の人間をちらりと見やってから、ため息混じりに口を開く。 「……用事云々の前に」 そのカオを何とかしなさい。 囁くような小声で言われて、俺は無言で眉をひそめる。すると彼女は『あー、また!』とげんなりした声で言う。 「一年生が怯えるでしょうがっ!」 「ンなこと言われたって、これが俺の顔だっつーの」 悪いが、俺の顔は普段からこんなもんだと思う。もともとが無愛想だと評判の顔つきなんだ。こればっかは、生まれつきなんだから仕方ねぇだろ。自分で言ってて、情けない気もするけど。 思わず嘆息すると、哲が器用に片眉を上げた。何か面白いもんでも見つけたみたいな表情で口を開く。 「あれ、タカってば無自覚だったの?」 「はあ?」 「今日は普段の三割増しでコワイ顔してんだけど」 だからよっぽど、嫌なことがあったのかと思ってー。 哲はそう嘯いて、隣に立つ藤原に同意を求めた。すると彼女も大きく頷く。 「何、体調でも悪い? だったら……」 「いや、そーいうんじゃねぇから」 その言葉に、藤原と哲は互いに顔を見合わせた。そして向けられた視線には、ありありと疑問の色が含まれていた。 (つーか……) 不貞腐れた気分で思う。 (俺だって、よく分かんねっての) 何でこんなにモヤモヤしてんだか。 |