そうして始まる僕らのカタチ 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「追いかけないと! 成瀬くんっ!」 「いや、でも」 「『でも』もへったくれもないっ!」 小柄な身体に不釣り合いな迫力で、彼女は俺に指を突きつけた。すると、そこに不機嫌そうな低い声が割り込んできた。 「何騒いでんだよ、お前ら」 「曽根」 「俺もいるよん」 「あれマミー」 部室の入り口から覗きこむように、曽根と間宮が姿を現した。 「外まで瀬戸の声が響いてたけど……『追いかける』って、さっきすれ違ったコのこと?」 「どこに行ったっ?」 勢い込んで訊ねる瀬戸サンに、間宮がややたじろぎながら応じる。 「やー……校舎のほう、走ってったけど」 「ほら成瀬くんっ!」 「いや、ほらとか言われても……」 あの『ごめんね』がまた拒絶だったら、マジでもう立ち直れない。我ながら女々しいとは思うが、何とも言えず、救いを求めるように曽根を見た。彼氏なら、エキサイトした瀬戸サンを何とかしてくれるに違いない。 その視線に曽根はため息をついて、めんどくさそうに瀬戸サンを宥める。 「落ち着けって、瀬戸」 「曽根は黙ってて!」 しかし、彼女は曽根の声をぴしゃりとはねのけた。俺と間宮はぎょっとして、後退る。 瀬戸サンって、怖いもの知らずなのか? いや、だから俺様な曽根と付き合っていけるのか……。 俺がぼんやりとそんなことを考えていると、曽根が声を荒げた。 「ああっ?」 「おいおいおいっ」 俺は慌てて曽根を押し留める。カノジョに凄んでどうするよ、お前っ。 しかし瀬戸サンは一歩も引かず、曽根を見返している。 状況が悪化するばかりかと思われたその場を取り成すように、藤原の声が響いた。 「あんた達が険悪になってどうすんのよ。つーか、成瀬っ!」 「お、おう」 「あんた、あのコの本音、聞いたでしょう? だったら何をウジウジする必要があるのよっ」 「ンなこと言ったってなあ……」 「はっきり言っていい加減ウザイの! 不調の原因はあのコでしょっ!」 「何、成瀬。あのコと何かあったの?」 藤原の科白に間宮が食いつく。だが、すぐさま一刀両断されてしまう。 「黙れ間宮。他人事を詮索する前にあんたは説教を受けなさい」 「げ」 間宮は呻いて引き下がった。俺の後ろに隠れて何やらぶつぶつ言っているが、今は聞かないことにする。 一旦、静かになる室内。まだ瀬戸サンと曽根は睨み合ったままだし、藤原は呆れ果てたカオで俺を見てる。おまけに間宮が背後でいじけていて。 |