そうして始まる僕らのカタチ 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「『本気』になっていいか訊いてる辺り、アイツも判ってると思うわよ? 綾部さんがそういうことに疎そうだって。わざわざ訊いてくれてんだもの。ちゃんと綾部さんの心の準備が出来るの、待ってくれるって」 「そう、かなあ……」 そうだったら、どんなに嬉しいだろう。だけどやっぱり都合のいい想像だとも思う。 いまいち確信が持てなくて気弱に返すと、藤原さんが意地悪げに口元を歪めた。 「それとも信じられない? 成瀬はヒトの話を聞く度量のない人間だって思う?」 「思ってないよ!」 何故だか妙にムッとしてわたしは声を荒げた。 「成瀬はいつだって、わたしの話を聞いてくれたもの。いつも、ちゃんと考えてくれたもの。だからわたし……」 だから、わたしは思ったんだ。 成瀬を『好き』になれたらなって。 成瀬が特別なヒトになってくれたらなって。 「あ」 ぽろっとこぼして、わたしは口元を押さえた。それを見た二人がニッと笑う。 「わたし、それで十分答えになってると思うな」 「同感」 柔らかい笑みを浮かべた瀬戸さんとは対照的に、藤原さんが不敵に笑ってそれに同意した。そして、ドアに向かって声をかける。 「ねえ、成瀬?」 『は?』 訳が分からず、わたしと瀬戸さんがぽかんとしてドアに目をやると、そこには。 「……成瀬」 開かれたドアの向こうに、見たことないほどばつの悪いカオをした彼が立っていた。 【続】 |